第三十三話 獣人
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センシは、スプーンを正しく握らせた。
「スプーンは、こう握る。」
「人の勝手だろ、そんなの! 私はコレが一番やりやすいんだ!」
「そうだろうな。慣れぬ持ち方を強要されても、煩わしかろう。だが……。」
センシの背後に鬼が迫る。
ファリンが剣を抜いて、鬼を後ろから切った。
だが手応えがない。
「何コレ……紙? センシ! 気をつけて!」
鬼は、上半身を浮かせたまま、下半身を残して前進した。
「……見ろ。」
センシが後ろを向いて指さした。
「あれは、筋引という包丁の一種だ。肉を切り分ける際に使う。刃渡りは長く、いかにも恐ろしげだが、薄く繊細だ。それをあんな握り方で振り回せばどうなるか。」
「センシ!」
ファリンがセンシの鍋を床の上を滑らせるように投げた。
受け取ったセンシは、鬼が包丁を振り下ろす直後に鍋で頭をガードした。
次の瞬間、包丁は真ん中から折れた。
「…このように、道具の能力を引き出しきれず不利益を被る、可能性がある。」
折れた包丁は、センシの鍋の上を滑り、センシは、鍋を使って鬼の上半身を壁に押しつけて押さえつけた。
残る下半身は、ファリンが引っ張る。すると鬼の足が、マルシルの魔方陣に触れて、燃えた。
「あ…! センシ!」
「いまだ、ファリン!」
「チルチャック!」
「おう!」
ファリンは、チルチャックと協力して燃える鬼の下半身を持ち上げ、センシが押さえつけている上半身の方にぶつけた。
すると鬼は断末魔の声を上げながら燃えた。
***
鬼が燃える。紙製である鬼は、瞬く間に形を失って灰になっていった。
「怪我は無いか、猫の娘。驚かせるような真似をして悪かった。だが……。」
センシは、再び、アセビの手にスプーンを握らせた。正しい形で。
「道具の持ち方に良い・悪いがあるというのはなぜか? 一度考えてみて欲しい。」
「魔術の解除中に動かないこともね。もっと厄介な魔術だったら、どうなってたか……。」
「料理が冷めてしまったな。」
そしてリゾットを温め直した。
「それで…、どうして私達を追ってきたの?」
「私は…、ずっと身体にかかったこの呪いを解く方法を探してた。黒魔術による呪いだということまでは分かったが、黒魔術を扱える人間は見つからなかった。……そこの耳長に……、出会うまでは。」
「黒…、古代魔術といっても、いろいろで、私の研究は主に異次元からエネルギーを…。」
「誤魔化すな! お前ならできるはずだ! だって……。」
現にやったではないかと。
人間と魔物の異形を黒魔術で作ったと、アセビは言った。
ライオス・ドラゴンキメラの
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