第三十三話 獣人
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マルシルを取り押さえたアセビが、ファリン達に指示を出す。
「武器を置いて。五歩下がって這いつくばれ。少しでも動けば、こいつを殺す。」
そしてその言葉に従い、武器を置いて、五歩下がり、床に這いつくばった。
「あいつ…、確かシュローの取り巻きのひとりじゃなかったか?」
「ずっと私達を追ってきたのね。」
「おい。」
「な、なに?」
アセビがマルシルを見おろして言った。
「この術を解け。」
「えっ?」
「私にかかっている術だよ! 早くしろ!」
「ひいっ! な、なんの魔術をかけられているの?」
「見て分からないのか!? お前黒魔術師だろ!」
「………せめて、どこにかかっているのか、どんな魔術か、教えて…。」
「…チッ。」
舌打ちしたアセビは、頭巾を外し、シュルシュルと首に巻いている布を取り去った。
「私にかかっている術は、二種類。ひとつは首に。もうひとつは……。」
「あっ…。」
「全身にだ。」
アセビは、耳と、尻尾を出した。
それは、毛で覆われており、猫のようなものだった。そして目もよく見ると縦筋が入っている。
「獣人? なのかな…?」
「ははあ。昔一度見たことがある。人工的に作られた獣人だ。黒魔術で人と獣の魂を混ぜて作るんだとか…。」
「あ……。」
それを聞いたファリンの脳裏に、キメラと化したライオスの姿が過ぎった。
顔を青くしながら起き上がったマルシルが、恐る恐るアセビの首を見た。
「わ、分かった。できるだけやってみる。首元の…、これは…、東方の言語で書かれてるみたい。どんな術なの?」
「見て分からないのか? 一定時間術者が触れないと、作動する呪術だ。」
「……その術者は、マイヅルって人? 猶予はどのくらいあるの? 期限が来ると何が起こるの?」
「さあ? 急いだ方が良いかもな。私と一緒に死にたくはないだろ。解除したら解放してやる。変な真似はするなよ。お前なんかいつでも殺せる。」
「分かったから…。」
マルシルが、アセビの首に輪っかのように書かれた文字を調べた。
文字は東方の言語なのだが、中身はノーム魔術の流用だろうと判断した。これならば、自分でも解除できる。
解除するまでの間、静寂が流れた。
やがて、アセビが動いた。
「おい、そこのガキ。なんか食い物を持ってこい。」
言われて渋々起き上がったチルチャックが食料袋を持って行った。
ゴロンゴロンと食材が転がり出る。しかしすぐに食べられ物は少ない。
その中から、兵糧丸を見つけ出したアセビは、それをむさぼり食べた。
あまりにも勢いよく、そして下品に食べる。
「おぬし…、最後に食事をしたのはいつだ? そんなに
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