第三十二話 シェイプシフター
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「上への階段は、あれほど見つからなかったのが…、進むと決めた途端これだ。嫌な感じだな。すごく嫌な感じだ。」
下への階段は、すぐに見つかった。
階段には、鮮血が滴った跡が残っていた。
「兄さん…、つい先ほどここを通って下層に行ったのね。」
鮮血の跡から察するに、ライオス・ドラゴンキメラのものであろうと推測できた。
「私も、六階は、苦手だから気が重いなぁ…。」
「そういう話じゃねーよ。」
「なぜ苦手なんだ?」
「だって、あの熱気……。」
しかし、熱気は無かった。
代わりに、ぴゅううっと寒い風が肌を撫でた。
「さ、さむ!」
「寒い! どうして? 六階は、もっと蒸し暑かったはずなのに。道を間違えた?」
「いや、この道には見覚えがある。俺たちは、この階層で炎竜に襲われ、全滅しかけた。」
チルチャックがそう言った。
道が変動する迷宮なのだから、温度が変化しても不思議じゃないだろう。
「暑いよりはマシだけど…、雪と水で血の跡が消えてしまっているのが困るね。」
血の跡は、吹いてくる吹雪と流れてくる水で消えていた。
とりあえず、前回全滅した場所へ向かってみようということになった。うまくいけば荷物を見つけられるかもしれないからだ。
「兄さんは、だいじょうぶかな? 炎竜にはこの寒さはきついはず…。あ、だから羽毛だったのかな?」
竜特有の鱗に羽毛が混ざった異形だったのは、この寒さ対策のためだったのかとファリンは思った。
「それで? あんなハッタリをかました以上、何か策は考えているんだろうな?」
「それなんだけど…。」
ファリンは、これまでのことを整理した。
ライオスは、デルガルという人物を探していたこと。
そしてレッドドラゴンが狂乱の魔術師の命令で行っていたことが、デルガルを探すことだったこと。そのためにレッドドラゴンは、眠りもせず、普段と違う階層を歩き回っていた。
「デルガル?」
「誰だっけ? あー、聞いたがことあんだけど。」
「王様だよ。」
マルシルが言った。
「一千年前に滅びた、黄金の都。最後の王、デルガル。この迷宮には、あちこちに彼を称える言葉が刻まれている。」
「それだそれ! 発掘品にもたまに名前が書いてある。待てよ…。でもそのデルガルって…。」
「そう。この迷宮が発見された時、地上に現れて、塵になって消えちゃってるんだよ。」
「つまり!? 狂乱の魔術師は、とっくに消失した国王を探して、竜をこき使って迷宮を改装したりしてんのか!?」
「魔術師は、先王を目の前で暗殺されて以来…、息子のデルガルが同じ目に遭うのを恐れている。それで私達を暗殺者ではないかと攻撃してきた。」
「? なに? 妄想話?」
「あのね…
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