第三話 ローストバジリスク
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「わああああ!」
マルシルは、飛び起きた。
「マルシル!? どうしたの?」
「…ごめん。ちょっと、悪夢を…。っ、何!? この匂い…、夢の中の同じ!?」
「別のパーティーがあそこで朝食作ってんだよ、肉でも焼いてんだろ。」
見ると、反対側の吊り橋の木のウロの中から煙が出ていた。
マルシルは、遠望鏡を取り出して、そのウロの中の様子を見た。
魔法使いの女性冒険者が、網の下に火を付けており、その上で肉を焼いていた。
その焼いた肉をパンに乗せて他の者達が食べている。
「食べてる! 羨ましい!」
「うまそーだな。」
「本当に酷い。嘆かわしいことだ…。」
するとチルチャックとマルシルの後ろからセンシが来て言った。
センシは、語り出した。
最近の若い冒険者が摂る食事といったら、パン、干し肉(あるいは塩漬け)、ぶどう酒ばかり。つまりほとんどが栄養価を無視した保存が利いて長持ちするものばかりなのだ。
迷宮を探索する上で体力作りのため肉の脂は大事だが、それだけではダメだ、それでは魔物よりも恐ろしい栄養不足になると。
付け合わせに人食い植物や歩きキノコを加えるだけでもずいぶんと違うのにと。
若い冒険者達はそれが分かっておらんっとブツブツ言いながら、昨日の残りの人食い植物の実を朝食にした。
「っと、講釈をたれたが……、実は我々も完璧な食事をとれているわけではない。」
「……。いや、別に期待してないから!」
マルシルがそう言い訳したが、センシは、それを無視して語り出す。
「昨日はサソリ鍋。そして人食い植物を食べた。どれも栄養価は豊富な食材だが、足りていない物が分かるか?」
「常識。」
「そこなエルフの娘は、今豚肉を見て羨ましいと言ったが……。それは、身体が脂を欲しがっているせいだ。」
「違うわ! 魔物を食べたくないだけじゃ!」
「っというわけで、今日は脂分が豊富な魔物を狩る。できれば、卵もとれるととなお良い。卵は完全栄養食品。迷宮の中では積極的にとりたい。」
「…あっ! っということは…、アレですか?」
「アレだな。」
「なんだよ?」
ファリンとセンシがヒソヒソと話をしているのにたいしてチルチャックがツッコんだ。
「胴は鶏。尾は蛇。その牙と蹴爪には猛毒を持つという……、蛇の王バジリスクだよ!!」
「あー、バジリスクか……。マルシル、よかったな、鶏肉が食えそうだ。」
「鶏……。ねえ、鶏肉なの? ほんとに? 鶏肉って言っていいの?」
「知らん。」
「兄さんがいつも言ってたなぁ。混ざった種類は、かっこいいって。昔は混ざった種類が多いほど良いって言ってたけど、最近じゃ結局二種類程度の方がお互いの魅力を高め合っているって。もう
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