第一章
[2]次話
別の形で復帰
風張光人は今は音楽から退いて通っている高校の演劇部において端役等をやっている。だがその彼にだ。
親しい者はよくこう聞いた。
「もう音楽はいいのか?」
「作曲しないの?」
「折角いい曲何度もヒットさせたのに」
「復帰しなくていいの?」
「ああ、今はさ」
明るいが何処か陰のある表情になってだ、光人はいつもこう答えていた。
「こっちの方がずっといいから」
「音楽よりもか」
「音楽は聴くだけにして」
「作曲は忘れて」
「演劇に専念したいのね」
「そうなんだよ、俺ちょっと疲れたんだよ」
やはり明るいが何処か陰のある口調と表情だった。
「作曲に」
「一曲あまりヒットしなくて」
「それでか」
「だからなのね」
「うん、そのことがあって」
それでというのだ。
「今はさ」
「作曲から離れて」
「音楽を聴いて演劇をする」
「それでいいの」
「今はね」
こう言ってだ、光人は実際に作曲から離れていた。だがそんな彼にある日通っている学校のゲーム部の部長、彼の先輩から相談があった。
「うち今ゲーム製作してるけれど」
「あっ、そうなんですか」
「アドベンチャーゲームでね」
「アドベンチャーですか」
「推理のね」
「そういえば何か」
光人は自分のプレイステーションやスマホ、パソコンのゲームの知識から部長に答えた。
「最近のゲームってアドベンチャー少ないですね」
「推理のそれはね、けれどね」
「そこをあえてですか」
「同人だけれど」
この形でというのだ。
「製作していて完成したら発表して」
「そうしてですね」
「売り上げは部費にしようと思ってて」
それでとだ、部長はさらに言った。
「今脚本とかを部員で手分けしているけれど」
「順調ですか?」
「出来も含めてね、ただね」
部長は一呼吸置いてから光人に話した。
「一つ困ったことがあるんだ」
「それで俺に相談に来たんですか」
「そうなんだ、音楽担当が実はいないんだ」
「音楽が」
「音楽担当の部員が親の仕事の都合でタイに行って」
そうなってしまってというのだ。
「急にいなくなったんだ」
「それじゃあ」
「うん、音楽担当がいなくなって」
「それで俺にですか」
「名曲幾つも作った君にボランティアみたいな形になるし」
部長はこのことについて申し訳ないといった顔で述べた。
「休業中だけれど」
「そういうのはいいですけれど」
「お金とかのことは」
「俺作曲お金欲しくてやってたんじゃないですから」
それでとだ、光人もこのことは断った。
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