第三十一話 TABRIS
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点滅し、計器が火花を散らした。
そして警報が鳴り響いた。
それは、使徒の出現を知らせる警報であった。
「ば、馬鹿な…、し、使徒だと!?」
「こんな時に!?」
「まずい実験は中止だ!」
「いや今止めたら彼女は…。うわあああ!?」
再び大きな揺れが来た。先ほどよりも大きな揺れに、天井や床に亀裂が入り始める。
そしてすべての電源がブツンッと切れて暗闇が広がった。
***
「う…、ぅうん…。」
シンジは、目を覚ました。
目を覚まして最初に目についたのは、倒れた計器。
周りがほとんど見えないので埃まみれのマスクと帽子を外すと、血生臭い匂いと土埃の匂いが鼻を突いた。
起き上がろうとすると、薄赤い液体が床に流れていて、手を着くとピシャリと音を立てた。
「綾波? 綾波!?」
起き上がってみると、やや斜めに倒れかけた手術台に固定された状態のレイを見つけた。
レイは意識がなくぐったりと重力にまかせて首を垂れている。
「綾波…。」
体を揺するが反応がない。
まさかっと嫌な予感が過った時。
「うう……。そこにいるのは……、シンジ君か?」
「あ、はい! 綾波が…。」
手術台の反対側からむくりと起き上がる人影と声がした。
鰐渕だった。
鰐渕は、頭部から血を流し、壊れた眼鏡をかけていた。
「ああ…、君は無事か…。」
「綾波が…!」
「大丈夫だ。息はある。」
鰐渕がレイの脈と呼吸を確認した。
「シンジ君。彼女を支えてやってくれ。」
「えっ? は、はい。」
鰐渕に指示され、レイの体に触れたシンジを確認すると、鰐渕は手早く手術台の固定を外していった。
「そこに避難通路がある…。彼女を連れてそこから出なさい。」
「えっ。でも…。」
「いいから、行くんだ。」
鰐渕に指さされた先には、瓦礫で壊れた扉の先に空いた避難通路があった。
シンジは、少し頭が冷めてきて気付いたが、周りは天井が崩れ、床にも穴が空いていた。
鰐渕以外の人間の姿もない。そこら中から匂う血生臭い匂いが意味することはつまり……。
「行くんだ!」
「っ!」
顔を青くするシンジに、鰐渕が怒鳴って正気に戻させた。
シンジは、レイを背負い避難通路を目指して行った。
シンジが行った後、鰐渕はその場に崩れ落ちるように座り込んだ。
彼の背中からは鉄の棒が幾つも刺さっており、そこから大量の血が垂れていた。
「彼女は…、息があった……。脈も正常だった…。」
鰐渕の口から血が垂れる。
「きっと……、彼女は…………。」
鰐渕の表情は明るい。
そのまま彼は首を垂れた。
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