第十一話 IREUL
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ボリッと足が沈んだ。
装甲に見せかけた使徒の塊に足を取られ、その隙をついて、周囲から花弁のように浮き上がった青白いネバネバが、尾崎を取り囲み、尾崎を飲み込んだ。
「ーーー!!」
飲み込まれまいと足掻くも不定形な使徒の中で溺れるように尾崎は包み込まれ、機龍フィアの首筋付近に人ひとり分ぐらいの繭のようなものが出来上がった。
***
尾崎が使徒に飲み込まれた時、基地にいた音無は、ハッとして席から立ち上がった。
「音無博士?」
「……おざき…くん?」
「えっ?」
胸を押さえ、焦燥した表情を浮かべる音無の姿に、科学部の仲間達は訝しんだ。
その時、音無のパソコンに何かが通知された音が鳴った。
その音で我に返った音無は、パソコンを操作した。
そして手を止めた。
「………ナノサイズの…群体…、使徒……、名…は、…IREUL(イロウル)?」
「音無博士、それは?」
「機龍フィアのDNAコンピュータからの信号をまとめて、翻訳したものです…。DNAコンピュータが、使徒の解析を送ってくれた。使徒の正体がやっと分かった! イロウル! ナノマシンサイズの群体の使徒! この解析が正しければ、環境適応能力が武器でG細胞に必死で適応しようと自己進化を続けているから機龍フィアを動かすことができたんだわ! だとしたら…、素体の中のツムグの遺伝子細胞を活性化せても使徒を倒せるかどうか…。」
「そのデータを至急こちらにも回してくれ! 諦めるわけにはいかん!」
「尾崎君…。」
「しっかりするんだ! 君がそんな状態でどうする! 尾崎少尉のためにも気をしっかり強くもて!」
「っ! はい!」
尾崎のことで悪い予感が脳裏を過った衝撃から放心しかける音無を、上司の科学者が肩を掴んで言い聞かせて正気に戻させた。
機龍フィアのDNAコンピュータから送られて来た使徒イロウルに関するデータが科学部と技術部に行き渡り、今までの使徒とはまったく異なる形質を持つこの使徒を倒すための方法を探した。
***
機龍フィアを乗っ取っている使徒の正体が明らかになったことは、前線部隊にも伝えられ、衝撃を走らせた。
「微生物の使徒の集まりだとぉぉぉ!?」
届いた報せとその内容に前線司令官がたまらず叫んだ。
「だ、だとしら…、機龍フィアに直接登って行った尾崎少尉は…。」
副司令官が恐る恐る、M機関の士官を務めている熊坂の方を見た。
熊坂は、使徒イロウルに乗っ取られている機龍フィアを睨みつけて、固く拳を握っていた。
「熊坂…。」
熊坂とは旧知の仲の前線司令官は、熊坂の心中を思い、彼の背中を見た。
「ゴジラが機龍フィアに接近!」
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