第十一話 IREUL
[14/20]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
崩壊した街中だった。
目をこすり、それから周りを見回すと、倒壊した建物の瓦礫の隙間や、下敷きになったその下や、グシャグシャにへしゃげた車の中など、とにかく色んな所に人間の死体があった。
原形が残っている死体は、はっきり言って少ない。この大規模な破壊で原形がある死体が残るという方が難しいだろう。
ツムグは、死体に特に関心を持たず、あてもなく破壊された街中を歩いた。
とぼとぼ歩いていると、ふと立ち止まる。
目の前には、巨大な生物の足跡。
「…ゴジラさん?」
ゴジラの足跡だった。その足跡の中心には、ペッちゃんこになった…辛うじて人間?って判別ができる形で地面の染みになっている死体があった。
「なんでまた? 使徒ちゃんは何がしたいんだか…。」
自分を無理やり眠らせた相手のことはしっかり覚えている。脳に手出しされたとはいえ、精神がグチャにならないのは、G細胞のせいだろうか?
「ま〜、とりあえず何とかして起きないと…。っ?」
頭をボリボリとかいて、再び歩き出そうとしたツムグは、巨大な地響きを感じた。
「ゴジラさん? あっ。」
思わずゴジラを探して宙を見上げた時、大きな瓦礫がこちらに向かって飛んできた。
咄嗟に避けると、足元にじわりと赤い血の小さな川が流れて来た。
「場面が変わった? なんだなんだ?」
飛んできた瓦礫とその下から流れて来た血を見ているうちに、微妙に場面が変わったことに気付いて周りを見回した。
ふいに足に何かの看板が当たって転がった。
ツムグがそれを反射的に見た時、ツムグは、ピタッと止まって、それからスゥっと目を細めた。
「悪夢を再現して…、俺の精神を壊そうってか?」
『椎堂』と辛うじて読める壊れた看板の一部。
足元を汚している血が示すことは、つまりそういうことだろう。
「あいにくとさぁ…、俺、全然覚えてないんだわ。俺が今の俺になるまでの事。だからどーでもいいんだ。マ・ジ・で。」
ツムグは、そう吐き捨てると、乾いていない血を下から流している瓦礫の塊を殴って砕いた。
その瞬間、粉々になった瓦礫の下から青白い鋭い爪を持つ無数の手のような物がツムグに向かって伸びて来た。
爪がツムグの体に突き刺さろうとしたが、ツムグの体の表面に触れた瞬間、爪の先から青白い手はガラスが砕けるように微塵になった。
キラキラ光る青白い粒は、宙を舞い、渦を作りながらツムグを見おろすように動いた。
「チャレンジ精神は認めるよ? 俺を無理やり眠らせたり、機龍フィアちゃんの全部とは言わずとも、ほぼ全身を乗っ取ったのもさぁ。俺が覚えていない過去を悪夢にして俺に見せるってアイディアもG細胞に直接触れない使徒ちゃんの攻撃手段としてはいいと
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ