「これが『きもかわいい』というものなんですね」
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がかりは止まってしまう。
プレミアにお前はエルフの伝承に残った巫女なんだと言ったところで、記憶の設定されていない彼女にその思い出はない。さらに浮遊城を作るためにその身を犠牲にしたという巫女が、どうして浮遊城に設定もなく現れたのかという疑問も残る。
「……ふぅ」
「ところで、キズメルは困ったことはない?」
結局は分からないままだ。このエルフクエストを進めればもう少しくらいは手がかりがあるかと、アスナの台詞がクエスト開始の引き金になった――というのが正しいのだろうが、まるでそんな『NPCらしさ』を感じさせずに、キズメルは待ってましたとばかりに反応を返す。
「ありがたいな。人族の者たちがこぞって助けてくれるものだから、我ら騎士団も負けてはいられないと奮起しているよ」
だが、限界はある――と、キズメルは先の嬉しそうな口調から一変させて、騎士団長としての雰囲気を取り戻す。まるでこれから死地に向かうとばかりであり、心なしか周りのエルフたちにも緊張感が走ったように感じられるほどに。
「我らエルフは《聖大樹》の元でしか生きられない。故にこの呪いの大元は、恐らく我ら騎士団が足を踏み込めない場所にあるはずだ」
「そこを叩いてくればいいのね?」
「……リズは頼もしいな。そうだ。ひどく危険な任務になるだろうが、アスナたちと共になら、必ず」
「……共に?」
「もちろん私も同行する。そんな危険な場所を人族に丸投げでは、我らエルフの誇りなどあってないようなものだからな」
ただしリズの頼りがいのある脳筋案を聞いて、何を思ったかキズメルは少し吹き出しつつも言葉を続けていく。その後の言葉尻が気になったショウキの割り込みにも事も無げに笑って応じており、少しばかり緊張がやわらいだようだ。
「なんか加護がない場所じゃダメなんじゃないの?」
「《聖大樹》の枝があるのよ。貴重だけど、加護がない場所でも大丈夫になる」
「……たまに思うが、アスナは本当に人族か? エルフではないか?」
「あ、あはは……」
笑ってごまかすアスナの言う通りに、加護がない場所でもエルフの行動を補助する《聖大樹の枝》とやらを、キズメルは大事そうに懐にしまう。戦闘中に落とすようなことはなさそうだが、文字通りキズメルの生命線ともなれば注意するにこしたことはないだろう。
「さて。いざ出陣、といきたいところだが……」
そんな風にショウキがキズメルの心配をしていると、キズメルもまたショウキのことを見つめていた。ただし熱っぽい視線などとはまるで無縁であり、ただ心配するような視線がショウキの――正確には、ショウキの初期防具に向けられていた。
「こういう時に何と言うか、人族たちに聞いたことがある――ショウキ。『そんな装
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