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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
43話:教授
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から出ていった。そういえば当家に入り婿したコルネリアスも敬礼は嫌に様になっている。そして、信頼する人間とは、ある意味率直な表現で話をする。長兄のルントシュテット伯はどちらかというと実直で裏表のない印象だが、どなたの影響なのか......。

思えば義息との付き合いもかれこれ10年を越えた。定期昇進で大尉になり、統帥本部から私の艦隊の司令部に異動してきた。任官したての尉官に統帥本部で功績を立てるのは基本的には不可能だ。『前線で勉強してこい』という意図があったのだろうが、異動当初から任せた職務はきっちりこなしていたので、適応力を試す意図と、折り目正しいがウィットに富んだ表現をしていたので、鼻っ柱を折るつもりでかなりの業務を振り分けたが、苦労しつつもやり遂げた。

それから順調に昇進したのは、私の司令部では縁故や馴れあいを許さなかったため、他部署への異動希望を出す士官が多い中で、広い人脈を持っていた義息が司令部の取りまとめや外部折衝を取り仕切ったため、いつの間にやらなくてはならない存在になっていたことも大きい。10年以上、私の司令部に在籍したのは義息だけだ。

いつの間にやら愛弟子のような関係になり、気が付いたら私も宇宙艦隊司令長官になり、義息もそのまま司令部の参謀長になっているし、途絶えても仕方ないと思っていたシュタイエルマルク伯爵家を継いでもらってもいる。どこに縁があるか分からないものだ。遠縁のレオノーラを養女にして婿に迎えてから5年。直接の血のつながりはないとはいえ、孫を抱くことになるとは思っていなかった。

慣れ親しんだ戦術教本を開くと、少し劣化した提案書が目に入る。これから全てが始まった。まだ大尉だった義息が遠慮がちに持ってきたものだ。この提案書を基にして次世代艦の戦術・運用理論を構築し実証し始めて既に5年。帝国軍の戦死者をゼロにする事はできなかったが、大幅に減らすことはできた。叛乱軍の戦死者は1000万人をこえるだろうが、帝国軍の戦死者は20万人を超えてはいない。来期にはミュッケンベルガー大将が昇進して宇宙艦隊副司令長官に任ぜられる。このままいけば、後進達によい形でバトンを渡せるだろう。

第二次ティアマト会戦の主力を率いた730年マフィアの面々ももう現役には誰もいない。新進気鋭の分艦隊司令としてシトレーやロボスといった名前が聞こえているが、対応済みの戦術を試行錯誤している段階だ。あと10年はこのままでも帝国優位は動かないし、たとえ退役しても、戦術考察は続けていく。そんなことを考えているとノックがされ、コルネリアスが入室してきた。

「提督、弟との会談は如何でしたか?頻繁に無茶をいう奴なのでなにかご無理を言い出したのではないかと気になりまして」

『あくまで前線の人』という意識を持つために、自分の司令部では提督と呼ばせている
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