魔王
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てできなかった。
彼は、多くは語らず、付いてこい、と私に言った。
兄より少し小さく、スキルドより少し大きいその背を追って、私はゆっくり歩いた。
かつて、父は、裏切り者として、魔王軍に粛清されたのだ。
裏切り者の娘である私も、処刑されてしまうのかもと思うと、涙が出てくる。
だが、服を着替えさせられて、私が案内された先は、街の外だった。
「乗れ」
促された先には、大きめの馬車があった。
馬車といっても、それは、貴族が乗るような豪華なものではなく、商人が使うような荷物を運ぶものに、人が乗る狭いスペースが設けられていた。
戸惑いながら乗り込む。彼もマントを羽織った旅装束姿で、私を監視するように、対面に座った。
馬車がゆっくり動き出す。
グレバスの城下町が、少しずつ遠くなっていった。
どこに行くのだろう?
戦いの前線に連れて行き、兄達の前で人質として晒し物にされるのだろうか?
黙って考えていると、どんどん気が滅入ってくる。
彼の方も、一言も発さぬまま、じっと座っているだけだった。
耐えられなくなり、遂に私は口を開いた。
「あ、あの…… 私は、何処へ……?」
消え入りそうな声で、なんとか尋ねる。
「行先は、魔王領だ」
ぶっきらぼうに、彼は言った。
「魔王様は、孫のお前に一度会ってみたいとおっしゃっている。だから、これから魔王様の元へお前を連れて行くんだ」
魔王の元へ……?
言われてみれば、馬車の向かう方向は、ここに来た時とは真逆であった。
今更ながら気づく。
魔王という言葉だけ聞くと、恐ろしい化け物を想像してしまうが、父と同じ人種であり、私にとっては祖父であった。
そういえば、私と兄の肌に、父と同じ青い色が出なかったのは、たまたまだろうか?
父が街に出る時に、服とマスクで、できるだけ肌を隠していたのを思い出す。
ベスフルの周辺で、父以外に、肌の青い人は見たことがない。
私達が青い肌で生まれてきたら、2人での生活は、さらに苦しいものになっていただろう。
今から向かうのは、祖父の元。私の……お爺ちゃん?
祖父の話など、父からまったく聞かされたことはなかった。
考えてみれば、渡された服は、質素だが清潔で動きやすいし、今も、馬車の中で手枷などは嵌められていない。
縄で縛られて連れてこられた時とは、大違いだった。
敵中にいたとはいえ、王様の孫ゆえの待遇なのかもしれないと思えた。
祖父とは、どんな人なのか、怖くもあり、少しだけ興味もわいてきていた。
気が付くと、グレバスの城下町は、もう見えなくなっていた。
馬車は、途中、何度か宿場町を経由した。
その時には、1人部屋を与えられ、夜はベッドで眠ることができた。
一応、監視らしきものはつ
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