第三章
[8]前話
奪は何処かに去って行った、また誰かから身体の一部を奪う為に。だが彼はやがてある医師と出会い。
その医師に目を向けられて厳しい声で問われた。
「心臓や脳はどうするのだ」
「その二つか」
「そうだ、その二つは殺さずどうして奪う」
奪にこのことを問うのだった。
「一体」
「それは」
「出来ないな、御前は人を殺しはしないからな」
「それだけはしない」
誓って言うのだった。
「何があってもな」
「では御前はそうしたものを手に入れられずにだ」
心臓も脳もというのだ。
「そしてだ」
「このままか」
「生き返ることは出来ない」
「しかし俺は」
「生きたいな、ならだ」
それならと言うのだった。
「何とかしてやろう」
「どうするのだ」
「人工のそうしたものを作ってやる、その為には」
「どうしろというのだ」
「身体は全て作ってやるからだ」
それでというのだ。
「御前のその身体をだ」
「どうしろというのだ」
「全て返して来るのだ」
「そうしてか」
「生きろ、いいか」
「奪ったものを返してか」
「そうしてくるのだ、そうして罪を償ってだ」
奪ったものを返すことによってというのだ。
「また私のところに戻って来い」
「そうしたらか」
「身体をやる、どうだ」
「本当にだな」
「約束は守る、御前が人を殺すのなら別だが」
奪はこれまで何があっても人は殺さなかった、それでというのだ。
「殺さない、だからな」
「それでか」
「御前の心はまだ人間なのだからな」
人を殺さないからだというのだ、こう言ってだった。
医師は奪に身体を返させに行かせた、その間に彼の身体をその優れた医術クローンのそれを使って生み出し。
彼に与えた、事故に遭う前と寸分違わぬ姿に戻った彼は医師に問うた。
「俺が一人も殺さなかったからか」
「私も救った、そして身体を返してだ」
「罪を償ったからか」
「身体を渡した、もうこれからはな」
「これまでの様な罪を犯すことなくか」
「生きるんだ、御前は身体を失っても人間だった」
それならというのだ、人を殺さないことによって何とか人間であったというのだ。
「それならだ」
「また生きる今もだな」
「人間として生きるんだ」
こう言って彼を送り出した、奪はこれまで戦ってきた退魔師達に謝罪し和解しそのうえで元の場所に戻った、そのうえで昔の様に家族で幸せに暮らした。人間であり続けた彼は人間の生活に戻ることが出来たのだ。
殺しはしない 完
2018・9・23
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