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肯定して欲しくない人
第三章

[8]前話
「怖いわね」
「そうだな、若しかするとな」
「若しかすると?」
「御前グラウンドの近所で会ったのか」
 祖父はここで結奈に聞いてきた。
「そうなのか?」
「うん、そうだけれど」
「その人だな」
 孫の話を聞いてすぐに返事をした。
「わしが見た人は」
「お祖父ちゃんなの人知ってるの」
「ああ、男出入りがとにかく激しいんだが」
「男出入りって」
「仕事は何をしているかわからない」
 それはというのだ。
「けれどその男の人達に何をされても笑って自分が悪い貴方がいいと言うな」
「そんな人なの」
「一度家の外で思いきり殴られて警察が来たのを見た」
「そんなこともあったのね」
「しかしな」
 それでもというのだ。
「殴った人を訴えたりしなかった」
「幾ら殴られても」
「鼻血どころか口から血を出してもな」
 そこまでなってもというのだ。
「そうしなかった、自分が悪いと言ってな」
「そこまで暴力振るわれてなの」
「何でそこまでなったか知らないが」
「あの、幾ら何でも」
 暴力、それも口から血を吐くまで殴られる様なものだと聞いてだった。結奈は祖父に驚く顔で述べた。
「そんな暴力は」
「暴力自体がな」
「どんな理由でも駄目よね」
「しかしな」
 それでもというのだ。
「訴えなかった」
「そうだったのね」
「ずっと自分が悪いと笑いながらな」
「笑ってなの」
「どういう人かわかるな」
「本当におかしい人よね」
「わかったな、ああした人にな」
 認められてもとだ、祖父は結奈にあらためて話した。
「認められても怖いだろう」
「ええ、本当に」
「そうした人は目を見てな」
 そのうえでとだ、祖父はまた結奈に話した。
「怖いって思うだろ」
「実際に思ったわ、怖い目だったから」
 結奈は目も思い出した、それは確かに怖かった。
「わかったわ」
「そうか、すぐにわかるとは思わなかったが」
「それでもなのね」
「これでわかったな」
「よくね、けれどわかっても」
 それでもとだ、結奈は祖父に暗い顔で話した。
「嬉しくないわ」
「そうだろうな、わかっても嬉しくないこともある」
「そのこともわかったわ」
「そうか、じゃあ今晩の御飯作るな」
「今晩は何なの?」
「ハンバーグと海草サラダだ、デザートにオレンジパフェも買ってるからな」
「それも食べていいのね」
「そうだ、美味しく食べるんだぞ」
「そうするわ」
 笑顔でだった、結奈は祖父に応えた。祖父の言ったことがわかり怖い気持ちになったがその後はいいものが待っていた。


肯定して欲しくない人   完


                   2018・9・22
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