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Evil Revenger 復讐の女魔導士
運命の分かれ目
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どこかに運び去られようとしていた。
 何故? この人は兄さんの賛同者ではなかったのか? 私をどこに連れて行くつもりなのか? まさか、兄さんの命令で?
 私の思考は混乱するばかりだった。
 冷静に考えれば、この時、兄が私をどうこうする理由はない。実際のところは、私のことなど、もう歯牙にもかけていなかったであろう。
 城の裏口には、なぜか、見張りがいなかった。
 彼が、見張りを何らかの手段で、予め排除していたのだろう。
 裏口を出てしばらく歩いたところに、馬が止めてあった。
 こんなもので、いったいどこまで行くつもりなのか、目的がわからなかった。
「待て! あんた、チェントをどうする気だ!」
 声の先に、スキルドがいた。
 私が部屋にいないのを見て、追いかけてきてくれたのだろう。
 いつも、私を気にかけてくれる彼は、こんな時でも、ちゃんと駆けつけてくれた。
 スキルド、助けて! と、私は塞がれた口で全力で叫んだが、言葉にならないうめき声が、あたりに流れただけだった。
「ヴィレント殿には悪いが、この国にはもう愛想が尽きた。この娘は連れて行く。死にたくなければ、邪魔をするな」
 ガイはスキルドを睨みつけた。
 スキルドは、一瞬たじろいだが、
「チェントは返してもらうぞ!」
 覚悟を決めたように、腰の剣を抜いた。
 ヴィレントのように強くなりたい、といつも言っていたスキルドは、度々、兄に稽古をつけてもらっていた。
 だが、大した成果は出ていないと聞いている。今回の戦にも、スキルドは参加していない。
 今も、必死に恐怖を振り払おうとしている様子が、顔に表れていた。
 2人を見比べると、明らかに体格に差があり過ぎた。
 細身で、同年代の男性の中でも、背がやや低い方であるスキルドに対し、戦い慣れした体つきをしているガイは、大男と形容していい。
 スキルドは、他に人を連れてきてはいなかった。
 今、助けを呼びに戻れば、その間に、ガイは私を連れて、手の届かないところまで逃げ去ってしまうのだろう。
 私には、スキルドが助けてくれることを祈るしかなかった。
 スキルドが剣を抜くのを見たガイは、私を地面を放り出し、懐の短剣を取り出した。
 腰の剣は抜かない。目の前の細身の青年など、短剣で充分だと思っているようだった。。
 縛られている私は、1人で立つこともできず、視線だけをスキルドに向けた。
 ガイは、何の緊張も見せず、ゆっくりとスキルドに近づいていく。
 スキルドは、雄叫びをあげて、斬りかかっていった。
 お願い、頑張ってスキルド。
 スキルドの振り下ろした剣は、ガイの短剣にあっさりと受け流された。
 私の祈りも虚しく、ガイの短剣は、事務的な動作で、スキルドの脇腹に突き刺された。
「!?」
 私は悲鳴を上げた。

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