閑話4 ヒカルノと太郎(表面)【後編−1】
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「挽き肉は買ってあるわ。調味料も基本は揃ってる。貴方の腕、期待してるわよ!」
髪を片手で流しながら、そう説明するヒカルノの母親に、当然、太郎は突っ込んだ。
いや、そんな料理勝負スタート!みたいなこと言われても。
…………その…………なんだ…………困る(本音)。
「いや、初耳なんですけど?」
ごく当たり前の突っ込みを返す太郎。
だが残念。
ヒカルノ達に、その突っ込みは効果がない。
「ええ、今初めて言ったもの」
いや、そんな胸張って言われても。
母親の言葉に、内心、冷や汗をかく。
しかし、いつもヒカルノにやってるような対応は出来ない。
流石に人様の家で、初めて会う女友達の母親に無体な態度を取る勇気は、太郎にはなかった。
笑顔を張り付けながら、心を落ち着けるために、眼鏡を弄る太郎の指先。
その動きは、母親の後ろ手のドアから出てきたヒカルノを見つけた瞬間に、止まった。
ギギギ、と音がなりそうな、ぎこちない動きで首を動かすと、笑みで固めていた口許を動かして問いかけた。
「どういう事だい?ヒカルノさん?」
「えー、さん付けは他人行儀でやだ」
そういう問題ではない。
「なんで料理を作ることになってるの?俺?」
諦めず問いかける太郎に、ヒカルノは笑顔で答えた。
ジト眼で見ても、笑顔で返される。
「ほらー、二日前の屋上の事を思い出すのだ〜」
唐突に言われたその言葉に、太郎は首を傾げる。
(そんな大事なこと、忘れるもんかなあ)
そして、太郎は二日前に言われた事を思い出した。
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「アンタの弁当のミニハンバーグ、美味しいわね。お母さんが作ってるの?」
「まず、無断で人の弁当に箸つっこんで食べるの辞めろ」
ハムスターのように口を膨らませながら食べるヒカルノに突っ込むと、数十秒後、飲み込んだ後に言葉を重ねた。
「あー、美味しかった。で、お母さんが作っているの?」
「……とりあえず今度から欲しいときはちゃんと言え。後、そのハンバーグは俺の手製だ」
軽くコツンと、ヒカルノの頭を小突きながら返した事を。
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眉間を軽く揉みながら、太郎は確認した。
「え、何?あのやりとりは『作れ!』って意味だったの?」
この家に連れ込まれた後の、怒濤の展開を頭の中で反芻(はんすう)し、眉間を軽く揉む。
…………いや、よそう。
どうせこれ、逃げられない奴だし。
早々に諦めると、彼はヒカルノ家の歓談の為の、料理に戻っていった。
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