第11話
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ツを寝かせる方が安全だったのだ。この時、横になっている分だけ動きにくい、瞬発力に欠けるという懸念もあったが、杞憂に終わることとなった。モビルスーツは人型だが人間ではない。人間には無い各部のスラスターを併用すれば直ぐに動けるのだ。状況に応じて体勢を変えられる、人型であることの良さ。人間では不可能な、人間の限界を超える数々のギミック。モビルスーツは待機すること一つとっても、既存の兵器を上回るのだ。
寝ることが理にかなうとはいえ、稜線や窪地に沿って18メートルの巨人が仲良く並んで寝転んでいるのは笑いを誘う光景だ。笑っている人間など一人もいなかったが。パイロット達は機体を降りずに、コックピットのモニター画面に映るそれを無表情で見ていた。遠足に同行していた技術者達が稜線から隠れて撮影し、各機に送信しているライヴ映像だ。その内容は途方もないとしか言えない代物だった。
事が始まる前、樽は地上をブースト移動していた。複雑な動きではなく、右に左に、前に後ろに。それが終わると、ゆっくり円を描くように。何かの儀式というわけではなく、準備体操のようなものだ。のそのそと何周かしたころ、それが現れた。地平線の向こうでもうもうと上がる砂煙と、砂煙の最先端を突っ走る戦車群。
その数、実に46両。
大隊規模なら30両は固いと言っていたマ・クベの護衛をしている01だったが、相手は30どころか50に近かった。
連邦軍は戦車4両で小隊を、12両、3個小隊で中隊を編成する。大隊は2〜4個中隊。理屈で言うなら24両から48両ということになるが、現実には定数の上限である4個中隊、下限である2個中隊から成ることは滅多にない為、大隊規模といえばおおよそ3個中隊、36両。更に各中隊が故障や人員不足等で定数を割ることも珍しくない。36両ではなく30両以上と考えた01の判断は妥当なところではあったのだ。実際にはほとんど上限一杯の46両編成だったわけだが。
その46両が、野良犬の操る樽に対して手も足も出ない。高速鉄道以上の速度で旋回する樽を捉えきれず、まるで見当違いの方向へ砲弾を吐き出している。同士討ちこそ無かったものの、車体をぶつけ合う者も現れる始末。とはいえ、この数十秒の間に限定すれば、押しているのは地球連邦軍だ。樽は何ら反撃をしなかったからだ。まるまるとしていて、ごつごつとしていて、ずんぐりした樽。超高速移動が可能な樽。重装甲で高機動の、樽。だが、見たところ樽には武装らしいものはない。無手だ。いったいどのように戦うというのか。
「あの機体、まさか衝撃波や格闘だけで戦うなどということはあるまいな」
マ・クベはあり得ないだろうという意味でそう呟いたが、野良犬の戦術の中に選択肢として衝撃波は存在する。主に非装甲目標……はっきり言えば生身の人間相手に使う攻撃だ。敵を破壊
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