第四章
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公園に入るとその店はすぐに見付かった、店にソーセージ、ハム、ベーコンと堂々と書いてあった。その店に二人で行くとだ。
「また来てね」
「今来たんですが」
「また来てですか」
そう言われてまずはこう返した二人だった。
「あの、何か」
「逆じゃないですか?」
「そうかしら」
見れば店員は白い髪の毛をぼさぼさに延ばして細目で痩せた二十代の女性だった。着ている服は黒いエプロンのにティーシャツとジーンズというものだ。
「私はいつもこうだから」
「いきなりまた来てね、ですか」
「そうきますか」
「ええ、それで何を食べたくないのかしら」
今度はこう言った店員だった、店の中にはソーセージやハムやベーコンが上から吊られていて鉄板で焼かれている。
「煮たもの?」
「煮てなくて焼いてますよね」
「そっちですよね」
「あと食べたくないのかしらって」
「食べたいのはの間違いですよね」
「間違いじゃないわ」
今度もこう言った店員さんだった。
「それでどれを食べたくないのかしら」
「いえ、全部注文したいんですが」
「二人前ずつ」
二人は店員さんのあべこべな言葉にどう聞いてもそう聴こえる言葉で答えた。
「ソーセージもハムもベーコンも」
「焼いたのを」
「はい、煮たものね」
「またそう言いますけれど」
「焼いてますよ」
まだ言う二人だったが店員さんはちゃいと焼いたものをちゃんと二人前ずつ透明のプラスチックのケースに入れて出してきた。そうしてだった。
「合わせて消費税込みで一八〇〇円ね」
「どれも一人前三〇〇円で」
「そうなるんですね」
「違うよ」
またこう言う店員さんだった。
「三百円ずつだよ」
「いえ、その通りですけれど」
「三百円ですが」
「まあとにかくです」
「お勘定はそれで払います」
二人で割り勘で千円札をそれぞれ一枚出すと百円玉が二つ返ってきた。それで勘定が終わると店員さんは今度はこう言った。
「いらっしゃい」
「いや、そこでまた来て下さいじゃ」
「そこもあべこべなんて」
二人はそのことに首を傾げさせた、だが買ったものは買ったので。
二人は家に帰ってからそのソーセージやハムやベーコンを食べてみた、するとだった。
「美味しいわね」
「そうよね」
「ちゃんと作ってあって」
「味加減も焼き加減もよくて」
「何か変な店員さんだけれど」
「腕は確かね」
燻製の作り方も調理もというのだ。
このことはよかった、だがそれでもだった。
二人はあの店員さんのことがどうしても不思議でだ、夕食の後で拓郎と育枝にこのことを話した。和彦は今は入浴中だ。
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