閑話4 ヒカルノと太郎(表面)【中編】
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「…………で?太郎さま、聞きたいんだけど?」
不機嫌な顔を隠そうともせず、ヒカルノは言う。
「わざわざ仮入部の私を指名したのはなんで?嫌がらせ?」
だが、棘のある口調で、嫌がらせの『様』付けを変えずにそう言っても、太郎は全く堪えない。
「んー、ほら、『君以外』の人達は、緊張から解き放たれてぐったりしてたからさ、『部の代表者に仮入部の君を差し出すくらい』にね?」
むしろ、どこ吹く風、とばかりに言葉を紡いだ。
「…………そうしたのアンタじゃない」
その言葉に、額を押さえながら、ヒカルノは返す。
怒号、叱責という鞭でいたぶった後の優しい言葉。
それに安堵し、涙を浮かべて一息入れている状況で、太郎の口にした言葉に対して疑問を口にする。
つまり、『逆らってみる』
その結果、どんな言葉が返ってくるのか分からないのに。
再度言うが、散々、言葉で痛めつけられた後にである。
(そりゃあ、無理な話よね…………)
それを皆に要求するほど、ヒカルノは鬼ではなかった。
「まあまあ、良いじゃない。君も部屋から出ていきたかったんだろ?それに…………」
歩きながら目だけ此方に向けて、太郎は笑顔で、こう言った。
『どんな理由でも、こちらの仕事に手を貸してくれたんだ。君に損だけさせるつもりはないよ?』と。
『爽やか』のお手本のような笑顔。
それを自身のイケメンフェイスを悪用して行うのだから、なるほど、『うぶ』な女なら、それだけでノックダウンしそうではある。
(だけど残念、私は性格ねじくれてるの)
『普通』の女のような反応など、してたまるか。
そんな感情と共に、『当時の』私は、こう答えた。
『絵にかいた餅で喜ぶ趣味はないねえ〜』
そう言って、もったいぶった後に、襟元をつかんで、太郎に言う。
『具体的にご褒美を出したら信じてやんよ!』と。
一瞬、止まる時間。
目を丸くする太郎。
「ははっ!そうきたかあ…………」
彼はその答えに、嬉しそうに笑っていた。
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「あの時の太郎、楽しそうに笑いおって…………」
当時の苦々しい気持ちを思い出し、ヒカルノは言葉を吐いた。
部室で見せたSMプレイ(?)に人心掌握術。
ついでに、妖しげな笑顔(ヒカルノ視点)
いやあ、当時から怪しい悪党ムーブ全開過ぎだろ太郎。
後で本人に聞いた話では、緊張せずにズケズケ話してくれたのが好印象だったから、少なくとも私とのやり取りは、裏無く喜んでいたらしいが…………
「言わなきゃ分からんわ〜」
うん、あの口調と笑顔は胡散臭い(断言)
なまじ顔が良いので引っ掛かる奴も
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