巻ノ百五十三 戦の終わりその十二
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「余はそのそなたを見よう」
「そうして頂けますか」
「その道を歩むのをな」
「有り難きお言葉。ただそれがしも」
ここでこうも言った幸村だった。
「人間五十年といっても」
「もう五十じゃな」
「そうなろうとしております」
「そうか、そなたも五十か」
「はい、ここからどれだけ生きられるか」
それはというのだ。
「わかりませぬので」
「だからか」
「はい、ですが生きている限りです」
「その生をか」
「悔いなく生きて」
そうしてというのだ。
「武芸と学問に励み」
「武士道をさらに歩んでいくか」
「そうしていきまする」
「道か」
後藤は幸村のその言葉を聞き瞑目する様に目を閉じた、そうしてから幸村に対してこうしたことを述べた。
「真田殿はあくまでか」
「はい、道をです」
「進みたいのじゃな」
「それがそれがしの望みです」
「富貴も官位も何も求めずか」
「人としての武士の道をです」
まさにそれをというのだ。
「求めておるます」
「そうした者か」
「はい、それがしは」
「そうか、それはな」
「後藤殿もですか」
「やはりそうらしい」
後藤は幸村に笑みで答えた。
「どうもな」
「それでは」
「この薩摩で武芸と学問に励み」
そうしてというのだ。
「道を歩むか」
「武士の道を」
「そうするか」
「そうじゃな、わしも何もなくなった」
長曾我部も言ってきた、それも笑みで。
「大名に返り咲こうという気もな」
「では」
「武士として生きるだけ、ならばな」
「武士道を」
「共に歩もう、真田殿達とな」
「無論我等も」
十勇士達も言うのだった。
「そうさせて頂きます」
「そうか、お主達もか」
「先程申し上げた通りです」
「我等は殿の家臣にして友、そして義兄弟です」
「死ぬ時と場所は同じと誓った」
「そうした者達ですから」
だからこそというのだ。
「殿と共にです」
「武士道を歩んでいきまする」
「その果てまで」
「ははは、これは面白い」
一同の言葉を聞いてだ、家久も笑って言った。
「この薩摩でこれだけの武士が道を極めんとするとは」
「そうしても宜しいでしょうか」
「拙者も武士」
これが家久の幸村への返事だった。
「ならばな」
「それがし達の道を進むのを」
「是非見せてもらう」
そうするというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで」
「薩摩にその武士の姿を永遠に伝えさせてもらう」
その姿をというのだ。
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