巻ノ百五十三 戦の終わりその十一
[8]前話 [2]次話
「ですから」
「この国を出て」
「やはりもう本朝では切支丹は当分生きていられぬ様なので」
「だからでござるか」
「本朝を出て」
そうしてというのだ。
「そのうえで」
「他の国に行かれて」
「切支丹として生きまする」
そうするというのだ。
「その様に」
「左様でありますか」
「はい、考えましたが」
その結果というのだ。
「それがしはその様にしようとです」
「決心されましたか」
「海に船で出て」
そしてというのだ。
「呂宋かシャムに出て」
「その地で、ですか」
「生きようとです」
「思われていますか」
「あちらにも日の本から来た者が多いといいます」
これは本当のことだ、この国を出てそうした国々で暮らしている者も出て来ていたのである。それで明石も言うのだ。
「ですから」
「これからはですか」
「あちらで生きたいのですが」
「わかり申した」
それならとだ、家久も頷いた。そうして言うのだった。
「それでは明石殿が思われている様に」
「その様に生きさせて頂きます」
「それでは」
こう言ってだ、そしてだった。
明石は禄はいらず南に行くことになった、そのことも決まってだった。一同はいよいよ酒と馳走を楽しみだしたが。
幸村は飲みつつだ、微笑んでこんなことを言った。
「それがしこれまで生きてきて」
「どうであったか」
「はい、満月の如くです」
こう秀頼に言うのだった。
「満ちておりまする」
「そうした一生か」
「はい」
その通りだというのだ。
「まさに」
「そうなのか」
「多くの友と共にいて武芸と学問に励め」
己が望む様にというのだ。
「そして今も約束を果たせて」
「叔父上とのか」
「右大臣様をお助け出来て最後の戦にもです」
「勝てたからか」
「はい、これ以上はないまでにです」
「満ち足りたものであるか」
「それがし程の幸せ者はいないのではないか」
こうまで言うのだった。
「思っております」
「左様であるか」
「はい、そして」
「その満了の人生をか」
「それをさらにです」
「進めていきたいか」
「そしてそのうえで」
さらにというのだ。
「何時かです」
「武士道を極めたいか」
「そうしていく」
「そのつもりです」
「わかった、ではな」
「その様にですか」
「していくのじゃ」
秀頼は幸村に告げた。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ