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真田十勇士
巻ノ百五十三 戦の終わりその十

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「お主達はこれからもな」
「共にですか」
「殿とここにいてよいですか」
「お仕えさせて頂いたうえで」
「頼むぞ、それでじゃが」
 さらに言う幸村だった。
「拙者と共にこの薩摩におるがな」
「禄のことならば」
 ここで家久がまた話した。
「ご安心を」
「それでは」
「真田殿に表向きは名前を変えて頂き」
 そしてというのだ。
「百石で宜しいでしょうか」
「百石か」
「右大臣様には千石をお暮しに」
 その為にというのだ。
「用意しておりますし」
「そうしてくれるのか」
「それで如何でしょうか」
 秀頼にも話した。
「当家から」
「よいのか。薩摩藩は七十七万石というが」
「それは表向きで、ですか」
「実は四十万石もなかろう」
 言っている石高の半分位だろうというのだ。
「そして武士の数が多い」
「そのこともご存知でしたか」
「その分出す禄も多いであろう」
 それで秀頼達に禄を用意することはというのだ。
「民達も苦労しよう」
「いえ、これはです」
「これは?」
「実は加藤殿や細川殿、黒田殿からお話がありまして」
「あの者達がか」
「はい。やはり幕府も見て見ぬ振りで」
 それで通っているものだというのだ。
「そうしてです」
「余の千石にか」
「はい、ですから」
 それ故にというのだ。
「用意出来ます」
「そうなのか」
「ですからご心配なく」
 島津家のことはというのだ。
「それでお暮し下さい」
「そうであったか」
「真田殿の百石は」 
 それ位はという口調での言葉だった。
「別にです」
「何ということはないか」
「はい、そして真田殿の後継ぎは」
 家久はそのことも話した。
「もうそれは」
「それがしでござるか」
「そのことで」
「ではそれがしは」
「表向きは島津家の家臣、しかしその実は客分として」
 その立場でというのだ。
「子々孫々暮らして頂くということで」
「有り難きお言葉」
 大助は家久に深い感謝の意を以て応えた。
「それでは」
「その様に。無論後藤殿に長曾我部殿も」
 彼等のこともだ、家久は話した。
「百石用意致します、そして明石殿も」
「いえ、それがしは禄はいりませぬ」
 明石は家久に笑みを浮かべて応えた。
「それは」
「というとまさか」
「はい、それがしはやはり切支丹です」
 だからだというのだ。
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