巻ノ百五十三 戦の終わりその二
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「ですから」
「勝ちたくなったか」
「はい、それがしの我儘でありますが」
「よい」
家康は微笑んで服部に答えた、そのうえでの言葉だった。
「お主はこれまでわしの。徳川家の為に尽くしてくれた、我儘を言うことがなかった」
「だからですか」
「そのお主の言うことだからな、それにそうした我儘ならばな」
「聞いて下さるのですか」
「うむ、ではな」
「はい、それでは」
「あの術を使うがいい」
「そうさせて頂きます」
「そして勝つのじゃ」
服部にこうも言うのだった。
「よいな」
「はい、それでは」
服部は家康に頷いた、そしてだった。
幸村に向き直ってだ、こう言った。
「それではです」
「これからでござるな」
「はい、それがしの最後の術秘奥義を出します」
「そしてそれがしに」
「勝ちまする」
全身から凄まじい気を発しての言葉だった。
「そうさせて頂きます」
「そうですか、では」
「これより」
「ではそれがしも」
幸村も受けて立った、そしてだった。
両者はそれぞれの秘術を出した、服部はその身体から九頭の激しく燃え盛る炎の龍を出しそれで幸村に襲い掛かった、幸村もまた。
七身のそれぞれの双槍に炎を宿らせその全身にもだった。
炎を宿らせてだ、そのうえで。
龍に向かった、双方激しくぶつかり。
場が燃え盛った、さながら地獄の様に。
龍と幸村はその中で激突してだ、その結果。
幸村の身体は六つまで消えた、だが龍もだった。
八つの頭が死闘の中で消えてだ、そうして。
最後の頭も一人残った幸村が薙ぎ払った、すると遂にだった。
龍は消えた、それを見てだった。
服部は右膝をついても尚幸村を見据えて言った。
「今ので、です」
「最早ですな」
「それがしは戦えなくなりました」
「力を全て出し切り」
「はい」
その通りだというのだ。
「これで」
「そうですか」
「貴殿の勝ちです」
まさにというのだ。
「これで」
「では」
「大御所様、申し訳ないですが」
「よい」
家康は服部に敗れても笑顔であった。
「そなたは死力を尽くして闘った」
「だからでありますか」
「見事な戦ぶりだった」
それ故にというのだ。
「その戦ぶりを見てはな」
「それではですか」
「わしも何も言えぬ、だからな」
「よいですか」
「うむ、素晴らしき戦ぶりであった」
微笑みこうも告げたのだった。
「実にな、後で褒美を渡す様にな」
「その様にもですか」
「伝えてもらおう」
「有り難きお言葉」
「それを伝えるのは」
ここでだ、家康は。
勝った幸村を見てだ、こう言った。
「お主に頼むか」
「それがしにですか」
「ここでわしがお主の相手となるのだがな」
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