第9話
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、開発中の重モビルスーツがザクと樽のどちらに似ているかといえば、断然、樽だ。ザクとは似ても似つかない。つまり開発中の重モビルスーツとは、樽に似たコンセプトということになる。ザクとは違う方向性で開発中の新型機と、その新型機に似た謎の機体。
マ・クベの目が細くなる。
――なぜこの機体を最初から量産しない? 製造コストか? それとも機動に耐えられるパイロットが稀少で、主力機としては不向きだからか? コストの問題よりもそちらかな。
そう考えたマ・クベは思考を切り替えた。現実の野良犬を確認した現在、非常に残念なことに、野良犬はマ・クベの一存で謀殺してよい存在ではなくなってしまった。キシリアからは現地の武装勢力と聞かされていたが、これはかなりの確率で、現地の武装勢力という言葉がイメージさせるゲリラ的な何かの類いではない。独自の研究開発機関と製造設備を持ったナニカだ。少なくともただの傭兵ではない。
コックピットの中でマ・クベは一つ息を吐いた。野良犬と至急会うために色々と無茶を通したが、間違いなくそれ以上の価値がある。それを自分のものに出来るかどうか……いや、手に入れる為に更なる無理を通す覚悟を決めたのだ。
外部音声のスイッチを入れると、マ・クベは野良犬に向けて機体を歩かせながら告げた。
「野良犬、報酬の話なのだが」
「うん」
「金銭や物資だけでは我々の感謝を伝えきることは出来ないと考えている。もちろん可能な限り応えたいと思うが、それとは別に……」
部下達を介さず、直接通信を交わすマ・クベと野良犬。ほぼ不動のマ・クベのザクTに対し、どういうわけか野良犬の乗機は、頷いたり首を横に振ったり、若干の身振り手振りも混じる。巨人の隣でずんぐりむっくりとした樽がちょこちょこと動く様は、なかなかシュールな光景だった。どれだけ話したか、部下達がいい加減焦れ始めたころ、すっかり蚊帳の外に置かれた輸送車がマ・クベに緊急通信を送った。
「お話し中申し訳ありません。司令、基地から緊急通信です。大隊規模の連邦軍が接近中とのことです」
野良犬とのランデブーポイントはジオン公国と地球連邦の勢力圏の境目付近であるから、マ・クベ達は事前に連邦軍の移動経路も予想していたが、ここまで連邦軍が北に寄ってくるとは考えていなかった。マドラスからはヒマラヤ山脈が壁になるので、マドラス基地やその周辺から直接来た連中ではない。大隊規模というのは哨戒部隊にしては多すぎる。昨夜頓挫したオデッサ奪還作戦か、現在も続くコーカサス地方の戦闘の増援か、移動中の部隊が進路を変えたのだろうが、一体その理由は。
「ミノフスキー粒子の濃度で逆探されたか……?」
「ミノフスキー粒子?」
初めて聞く単語に、野良犬の乗機が顔を上げた。野良犬との通信回線を開いたまま
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