17話:お人よしの独白
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囚われ、捕虜としてこのまま朽ちていくつもりでいたが、大規模な捕虜交換の話の出元が抱いてやって欲しいと言われたザイトリッツ様だと知った時、帝国に戻ることを決めた。
もう妻の事は気にならなくなっていた。
「カランッ......。」
それなりの時間、思いにふけっていたのだろう。水割りグラスの氷が、バランスを取るかのように音を立てた。程よく冷えた水割りを口に含む。
捕虜収容所への移送の途中で将官は別の所へ移送されたため、必然的に大佐であった私が、捕虜の取りまとめ役をやるようになった。捕虜交換といえば聞こえはいいが、敗戦して降伏した者にとって帝国の風あたりは強いはずだ。
将来のある若いもの達の盾になれればという気持ちもあったのかもしれない。将官以上の方々は別の収容所に送られたし、背負う物も大きい。自己を守ることはできても兵士たちを守れるかというと疑問だった。
帰国を喜ぶ連中を見ていたら、少しでも守れれば私が生きた意味もあるのではとも思ったが、捕虜交換を終え帰国すると予想以上に風当たりは強かった。
当初は叛徒に降るなど臣民としての資格がないという批判に晒されたが、これに対しては軍が受けて立ってくれた。私も貴族の末席に連なる者だが、前線に出ずに宮廷で政治ごっこをしている門閥貴族が実際に前線に出た者たちにこんな主張をするとは思わなかった。
安心したのもつかの間、帰還兵の一部が社会秩序維持局にかなり強引な取り調べを受け始めたとき、私には対抗手段がなかった。家族を人質同然にされては、いくら耐えろと指示したところでどうにもならない。
本来なら勅命で農奴から解放されるはずにも拘らず、解放したくない為に社会秩序維持局と組んで強引に思想犯にしようとするなど私の理解の範囲を超えていた。とは言え、苦労を共にした連中だ。助けられるなら助けたい。
すがる思いで当代のルントシュテット伯と面会をした際、抱いてやって欲しいと言われたザイトリッツ様と知己を得たのだ。
ザイトリッツ様は、父君ルントシュテット伯の前では遠慮気味であったが、その後、お忍びの場でフリードリヒ殿下と雑談をされたと思うと、社会秩序維持局への対抗策をさらりと殿下にお伝えされた。
良くできた対抗策だった。
帰還兵を守るという私の望みはなんとかかないそうだ。
叛乱軍に一度とは言え降った以上、軍でも政府でもこの経歴はずっとついて回るだろう。気持ちよく働くことなどできまい。であるのであれば、レオンハルト様の御恩も含めてザイトリッツ様の為に残りの人生を使うのもいいかもしれない。
抱いてやってくれと言われたザイトリッツ様ももう7歳。時の流れを感じたが、7歳にしては仮に伯爵家の英才教育をうけた事を差し引いても優秀さは際立っている。フリードリヒ殿下と人脈を結んでい
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