第8話
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犬を罵ることに一生懸命だったが、乗機の高性能センサーは南から接近する何かを捉えた。対象の速度は音速以上、1分と経たずに到達するだろう。すわ敵襲か、と身構えるマ・クベの護衛部隊の視界の先、青空の向こうに光点が一つ現れた。
「大型ミサイル!?」
「罠か!」
「閣下、お退きを!」
「ミノフスキー粒子散布濃度はどうなっていた!」
一斉に騒ぐ護衛部隊だが、ミサイルと思われる未確認飛行物体に向けて迎撃を開始するものはいなかった。護衛のザクUの兵装のうち、迎撃に使えそうなものはマシンガンのみだが、マシンガンというだけあって短射程である。更に、根本的にザクUは……護衛部隊の多くを占めるC型は、遠距離攻撃を得意としていない。ザクシリーズは基本的に近距離で戦うことを想定しているからだ。レーダーに求められる性能も高いものではなく、対象の速度や武装の有効射程にレーダーの性能を勘案すれば、迎撃開始は着弾予想時間より10秒前。対象との距離が8キロメートルを切ってからだ。命中が期待出来るのは更にその半分以下からだが、相手は静止目標ではない。撃ちながら感覚を修正する必要があるため、少し早くから撃たなくてはならないのだ。
固唾を呑んで見まもるというには短い時間の後、護衛部隊がマシンガンに指をかけたあたりで大型ミサイル(仮)の挙動が変化した。急速に高度を下げていく。目標は未だ眩しいくらいに炎を吹き出しているので、失速して落下しているわけではない。意図して高度を下げているのだ。それを見たマ・クベは、周囲が射撃姿勢を崩さない中、ただ一人、乗機を起こした。こちらに翔んでくる大型ミサイル(仮)が待ち人だと気付いたのだ。コンピューターが計算した『弾道』の正面で乗機を仁王立ちにする。絵になる構図だが、それを観賞する余裕は誰にもない。部下達が大慌てでマ・クベの乗るザクTを取り囲み盾になろうとするのを、マ・クベは抑えた。
「2機は私の両翼に、残りは後ろで並ぶのだ。奴の前だ、無様を晒すことは赦さん」
「はっ!? ……ははっ! 了解しました! 03、お前は右、俺が左だ。02は第2小隊と共に横列! 時間が無いぞ! 急げ!」
マ・クベの意を受けた01……護衛部隊の隊長の指示のもと、護衛部隊は素早く配置を変える。遠目に見ているだけならば日系スクールで行われる運動会の組体操に見えるが、実際のスケールでは18メートルの巨人が地響きを立てて移動しているのだ。ザクT、ザクUともに曲線を多用した外観をしているため、人によっては可愛らしさすら感じるかもしれないが、至近距離に無防備な人間が立っていたとすれば、伝わる振動だけで死にかねないほど物騒な光景である。
組体操が終わった直後、地表を爆走する大型ミサイル(仮)の姿をマ・クベの乗るザクTのメインカメラが捉えた。
……話に聞いた通りの光
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