第8話
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ハプスブルグ家である。彼らが本拠を移したウィーンは旧オーストリアの首都だが、婚姻政策によってハプスブルグ家が複数の国家を支配するとハプスブルグ帝国の首都として大いに発展した。数世紀の長きに渡り、ウィーンはヨーロッパの首都であったのだ。時は流れヨーロッパの王として君臨したハプスブルグ家の支配も弱まった。加えてプロイセンの伸長と市民革命の広まり、続く二度の世界大戦によって旧オーストリアの地位は低下の一途を辿ったが、それでもなおヨーロッパの中心にあるという地理的要件が変わることはなく、ヨーロッパ有数の国際都市であり続けた。旧世紀末にあっても多くの国際機関が本部を置き、宇宙世紀になっても重要性は変わらない。
そのウィーンが地上から消えた。宇宙世紀0079、3月7日未明のことである。
こんなことをしでかすような人間は一人しかいない。オデッサは屋根のある建物が珍しいほど破壊されたが、ウィーンでは、壁のある建物が珍しいほど破壊された。当然だが、屋根もない。壁だけ無くなって基礎の上に屋根が乗っていたらそれはそれで凄い壊しかただが、現実にはそんなギャグ時空の存在する余地などない。ウィーンとその周辺は廃墟を通り越して文字通り更地と化し、民間人の死傷者は推定100万人以上。この光景を作り出した犯人は公開通信で高笑いしていたそうだが、笑える要素など何もない。
ウィーン壊滅の一報を受けたマ・クベは立ったまま意識を失ったが、放心していたのは僅かな間であった。副官の必死の呼び掛けに意識を取り戻すと、マ・クベは幕僚団の用意した段取りを全て無視して精力的に活動した。これ以上は弄りようがないという過密スケジュールの中で予定を全て反故にして無理やり時間を作り、3月6日の通信で3日後と定めた会談の予定を繰り上げたのだ。
マ・クベの元に連邦軍全滅の報せが届いたのが3月6日の日没後、ウィーン壊滅の報せが届いたのが3月7日の夜明け前。3月9日に会談する予定を3月7日に繰り上げたのも3月7日の夜明け前だ。全く無茶をしたものである。
現在のマ・クベのいる場所は、旧ダゲスタン共和国、カスピースクの北方。カスピースクはカスピ海西岸に面した都市だが、カスピ海の環境悪化を受け放棄されて久しい。放棄されたのはカスピースクに限った話ではなくカスピ海周辺は廃墟が広がるだけの無人地帯になっており、ジオン公国軍が第一次降下作戦の降下地点に設定した地域なのはそのためだ。地球侵攻作戦の始まりの地だが、マ・クベにそういった感慨はない。彼の頭の中にあるのはリリアナのリーダー、野良犬のことだけである。ここに来るまでの間もずっと野良犬のことで頭がいっぱいだ。断じて恋などではないが。
マ・クベの乗るザクTは指揮官型の改造の常として、正式量産型に比べて索敵範囲も通信範囲も広くなっている。マ・クベは野良
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