第五章
[8]前話
「だがそれには条件がある」
「条件?」
「条件といいますと」
「わしには二人の娘がある」
二人の戦士にこのことも話した。
「そなた達それぞれがな」
「王の姫君をですか」
「娶れと」
「そうしてもらいたい、そなた達は勇敢で強い」
この二つは一騎打ちを見てわかった。
「そして家柄もいい、ならばな」
「王の姫君に相応しい」
「そう言われますか」
「そうだ、だからだ」
その為にというのだ。
「婿にどうだ」
「はい、それでは」
「私も妻をと思っていました」
「私もです」
「流離いの身も終わらせたかったですし」
「ならばです」
「宜しくお願いします」
二人もこうアドラストスに答えた。
「そしてです」
「我等をそれぞれの王の座にですね」
「就けよう」
是非にとだ、アドラストスも約束した。こうしてだった。
アドラストスは二人の戦士をそれぞれの娘の婿に迎えた、こうして彼は娘達の夫を手に入れたのだった。
喧嘩の理由は些細なことだったがアドラストスにとってはどうでもよかった、それで彼は娘達の婿を得た喜びを感じていた。
そしてだった、妻にこう話した。
「神託の意味がはっきりしたな」
「はい、それはですね」
「紋章だったのだ」
それにあったというのだ。
「獅子と猪、それはな」
「それを描いた紋章が盾にある」
「彼等のことだったのだ」
まさにというのだ。
「そうだったのだ」
「左様でしたね」
「何かと思ったがな」
「そういうことだったのですね」
「そうだ、神託はわかりにくく出される時もあるが」
「その真意はですね」
「はっきりしている」
こう妻に話した、王妃である彼女に。
「そしてそれは神々の御手によってな」
「導かれるのですね」
「そうなるな、ではだ」
「はい、これからですね」
「わしは婿を得た、では次はわしの番だ」
「約束を果たしますね」
「そうする、彼等に約束をした」
婿となった彼等にというのだ。
「彼等をそれぞれの王位に就けよう」
「そうされますね」
「戦の用意だ」
アドラストスははっきりとした声で言った。
「すぐにテーバイとカリュドンとの戦の用意だ、まずはだ」
「どちらの街を先に攻められますか」
「テーバイだ」
この街即ち国だというのだ。
「あの街を攻めるぞ」
「婚姻の際の約束を守り」
「そうする」
こう言ってだ、アドラストスは兵を出すことを進めさせた。彼がテーバイを攻める話も一つの物語になっていくことはこの時の彼は知らなかった。ただ獅子と猪の神託がこうしたことかと思うだけだった。紋章に描かれていたのがそれだと。
神託 完
2018・4・18
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