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神託
第四章

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 二人のところに足を進めそうして言った。
「止めよ、王の言葉だ」
「王!?」
「この国の王が来たのか」
「そうだ、アルゴスの王アドラストスだ」
 まさにとだ、アドラストスは二人に名乗った。大柄な身体に厳めしい髭を生やした実に逞しい顔で。
「この名において命じる」
「まさか王が来られるとは」
「この国の王が」
「その王が命じる」
 二人の間に入り厳粛な声で告げた。
「争いを止めよ」
「うむ、ではな」
「我等もこの国の王が言われるのならな」
「争いを止めなくてはならない」
「法だからな」
 王の国の言葉は法と言っていい、だからだ。
 それで二人は争いを止めてアドラストスの前に剣と盾を置いて平伏した。だがここでアドラストスは二人のその置かれた盾を見た。
 二人の盾にはそれぞれ獅子と猪の紋章があった、アドラストスはその紋章を見て若しやと思ったがまずはだった。
 二人にだ、その名を問うた。
「名は何という」
「はい、私はポリュネイケスといいます」
「テュデウスといいます」
 二人はそれぞれ名乗った、どちらも精悍な若々しい顔立ちをしている。身体も大きく筋肉は実にいい感じで備わっている。
「カリュドンの王族でした」
「私はテーバイの」
「しかしカリュドンの王位継承の争いに敗れ」
 テュデウスが話した。
「今は流浪の身です」
「私もテーバイの王位継承争いに敗れました」
 ポリュネイケスも苦い顔で己のことを話した。
「そしてギリシアの地をさすらっています」
「そうか、二人共王家の者か」 
 アドラストスは二人の話を聞いて頷いた。
「盾のその紋章が証になるな」
「はい、紋章はです」
 兵の一人がアドラストスに応えて述べた。
「高貴な方でなければ」
「持てぬからな」
「ではお二方は」
「間違いない、それぞれの国の王族だ」
 アドラストスは確かな声で言った。
「血筋は確かだ」
「左様ですね」
「さて、それではだ」
 アドラストスは兵との話を終えてあらためて二人の戦士に声をかけた。
「そなた達は王の座に就きたいか」
「無論」
「このままで終わるつもりはありませぬ」
 二人はアドラストスに対して平伏しつつも毅然として顔を上げて答えた。
「決してです」
「流離いの身で終わるなぞもっての他です」
「何としても祖国に戻り」
「王の座に就きます」
「わかった、ではその手助けはわしがしよう」 
 アルゴス王である自分がとだ、アドラストスは二人に約束した。
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