暁 〜小説投稿サイト〜
新説狼少年
第五章

[8]前話
「家畜を小屋の中に避難させてな」
「農具や火を持って集まって」
「狼の方に向かう様にな」
 まさにというのです。
「そうする様にしたんだ」
「おいらはその為に」
「ああ、狼が来たと言ってもらってな」
「おいら自身もだね」
「すぐに羊を小屋に入れられる様にな」
 今は自分達の周りでくつろいでのどかにしている彼等がというのです。
「したんだ」
「ううん、何度も同じことをしてるとね」
 ここで少年も言いました。
「慣れてね」
「すぐに動ける様になるな」
「そうなったよ、おいらも」
「村の皆もな、あんな状況だとな」
 かつての村の悪い意味でのどかな様子が今も目に浮かぶ狩人でした。
「本当に狼が来た時はな」
「すぐに動けなくてな」
 また隠者が言ってきました。
「家畜が襲われて大変なことになるからな」
「この人が知恵を出してくれたんだよ」
 狩人は少年にあらためて話しました。
「時々御前さんに狼が来たぞって言ってもらってな」
「皆に何度も狼が来た時の動きをしてもらって」
「いざって時にすぐに動けて被害が出ない様にしていたんだ」
「そうだったんだね」
「ああ、よかったよ」
 しみじみとして言う狩人でした。
「上手くいって」
「何か皆遂に来たかって感じだったしね」
「狼は村に来るとも思っていただろ」
「うん、すぐに動けたよ」
「それだよ、本当にな」
 実際にというのです。
「何度も動いていて慣れていてな」
「狼が来るってことも頭に入っていて」
「すぐにああして動けて被害も出なかったんだ」
「いざという時に」
「そう、ああして慣れていて頭に入れておいてこそだ」
 隠者も言うのでした。
「何かが起こっても動けるんだ」
「そういうことだね」
「御前さんもわかったな、そのことが」
「よくね」
 少年は隠者のその言葉に頷いて応えました。
「本当に」
「それは何よりだ」
「これからも時々頼むな」
 狩人も少年にまた言います。
「狼が来たと言ってくれ」
「本当に狼が来た時に備えてね」
「是非な」
 その時に備えてというのです、こうお話してでした。 
 三人は羊達を見守っていました、そうしてまた狼が本当に来た時に備えるのでした。


新説狼少年   完


                 2018・2・16
[8]前話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ