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新幹線
第五章
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「すぐなのが凄いね、新幹線は」
「ああ、昔からな」
「祖父ちゃんが中二の頃に開通したんだったね」
「その頃からこうさ、もうな」
「あっという間に」
「東京から来られるんだ」
 孫に笑顔で話した。
「こんないいものはないだろ」
「祖父ちゃんいつもそう言うね」
 孫は自分で笑顔に話す祖父に自分も笑顔になって返した。
「本当に新幹線好きだね」
「大好きだ」
 孫の言葉はこう訂正させた。
「電車で一番な」
「そうだよね、本当に」
「あんないい電車はない、というかな」
「あれだよね、祖父ちゃんが子供の頃に」
「新幹線が出来るって聞いて夢だって思ったんだよ」
 孫にこの時のことも話した、実はこの話は孫に何度も話している。
「東京から大阪まで三時間か四時間だぞ」
「今はもっと速いよ」
 新幹線も改良されていってだ、そこまでの速さになっているのだ。もっと言えば路線の防音対策も進んでいる。
「新幹線もね」
「そうだな、しかしな」
「その頃はだよね」
「そんな話夢だって思ってた、しかしな」
「実際に開通して」
「乗ったら本当にあっという間だったんだ」
 東京から大阪まで行けたというのだ。
「電車は揺れないでな」
「そうそう、新幹線は揺れないんだよね」
「これも嘘みたいだった、しかし本当だった」
 この揺れないこともというのだ。
「だから本当にな」
「新幹線はだね」
「祖父ちゃんにとって現実だった、そしてな」
「その現実を今もだね」
「祖父ちゃんは実感しているんだ、祖父ちゃんにとって新幹線は夢でな」
 自分の子供の頃に聞いた、そうした話だったというのだ。
「そして現実になった、昔は本当にな」
「東京から大阪までだね」
「簡単に行けなかったからな、今の日本はな」
 今度は日本自体の話もした。
「祖父ちゃんの頃は戦争から復興してこれから発展かっていう時でな」
「その発展をしてだよね」
「出来たけれどな、その日本の発展の中にな」
「新幹線はあるね」
「そうだ、新幹線もその発展の柱の一つで」
 幸太郎は孫にこれまで何度も話してきたことをさらに話した。
「今だってな」
「あるんだね」
「ああ、柱の一つだ。それで祖父ちゃんは新幹線が大好きなんだ」 
 そうだというのだ。
「それで今も乗ってるんだ」
「こっちに来る時はいつもだね」
「帰る時も乗るしな」
「飛行機とかじゃなくてね」
「祖父ちゃんは新幹線だ」
 このことは変わらない、幸太郎は言い切った。
「死ぬまで乗るからな」
「本当に好きだね、僕にとっちゃ新幹線は普通にあるものだけれど」
「祖父ちゃんにとってはそこは違うからな」
 夢、そしてその夢が現実になったものだというのだ。
「こう言うんだよ」
「そして乗るんだね
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