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国民
第四章

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「部長さんが取材してくれたから」
「そっちを載せるか」
「うん、これで今週も記事出せるね」
「よかったな、じゃあな」
 大貴はその厚木の基地に向かいながら共に進んでいる歩に話した。駅前は店も多いが基地までの道は住宅街だ。
「基地の方行こうな」
「うん、けれど基地まで結構長いね」
「そうだよな、歩いて結構時間かかるな」
「自転車でもね」
 そちらでもとも話した歩だった。
「時間かかるよ」
「だよな、まあそれでもな」
「厚木の基地の正門にね」
「そっちに行こうな」
 二人でこう話してだ、その正門の方に向かった。彼等はここまで別に何も怖いものはいないだろうと考えていた。
 それで歩は大貴に気軽に話した。
「ヤクザ屋さんより怖いとかね」
「鈴木も若井も大袈裟だよな」
「そうだよ、そんな人達がいても」
「自衛隊の人やアメリカ軍だとな」
「全然怖くないじゃない」
「そうだよな」 
 こう二人で話すのだった。
「別にな」
「何が一体怖いんだよ」
「本当にね」
 この世にヤクザ屋さんより怖い連中なぞいる筈がない、二人はこう確信していてそのうえでだった。
 海上自衛隊厚木基地の正門の方に来た、するとそこにはだった。
「戦争反対!」
「アメリカ軍は出て行け!」
「国民の声を聞け!」
「北朝鮮と対話しろ!」
「内閣の軍事拡大政策を許すな!」
 こんな声が聞こえてきた、その彼等を見てだった。
 大貴は眉を顰めさせてだ、歩に囁いた。
「デモ隊か?」
「そうだよね」
 歩も大貴に頷いて応えた。
「あの人達は」
「普通の人達だよな」
「うん、デモ位ね」
「普通にあるだろ」
「何が問題なのかな」
「わからないよな」
「テレビで普通に報道されてるじゃない」
 それこそと言う歩だった。
「ああした人達は」
「だったら何で問題だよ」
「沖縄にもいてね」
「あそこにいてもな」
「別におかしくないだろ」
 二人はデモ隊を見つつ思った、だが。
 二人共だ、彼等が掲げているプラカードや旗等に書かれているスローガンの中にある文字を見た。その文字を見てだった。
 二人同時にだ、思わず声をあげた。
「ハングル文字!?」
「そうだよね」
「ああ、あれはな」
 二人はテレビや新聞では出ないその文字を確かに見たのだ。
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