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第三帝国崩壊後のランプ
南米にて
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助をしてくださるのだ」
「最後の時までベルリンに?」
「ああ。総統の遺体もこの目で確認した。だから、巷で噂される総統生存説なぞ嘘っぱちだ」

 正確にはヒットラーの遺書により党大臣に指名され、連合国のニュルンベルク裁判の被告でありながら唯一死んでもないのに捕まれなかったという経歴のため、ナチス残党の社会において大きな権威を得ているマルチン・ボルマンから『地下壕にいるユダヤ人を一人粛清する』という任務を遂行したことで信任を得たというほうが正しいのだが、そこまでランプは説明する気がなかった。

 AHSで優秀な成績をだし、ユーゲントでありながらスパイを検挙するという功績をあげて総統の目にとまり、総統秘書官から将来有望なSD幹部候補として活躍していたカウフマンがどれほど総統を慕っていたかランプは知っている。そんな彼にヒットラーを射殺したなどという言っていらぬ軋轢を生む必要もない。

「なにを飲む?」
「いえ、私は酒をやりません」
「ああ、そういえば、君はそうだったな」

 ランプはかるく笑って、ワインセラーから自分用の酒瓶だけを取り出した。

「それでいったいなんの仕事でしょうか」
「なんだ、藪から棒に」
「とぼけないでください。わざわざ自分に接触してきたということは、なにか私に仕事をさせたいのでしょう?」

 真剣にそう言うカウフマンだったが、ランプはそのことが心底おかしくてたまらないと爆笑した。

「いや、すまん。なにやら誤解させたようだな。わしはいまさら祖国のためになにかやってやろうという気はさらさらないのだ。党のカメラートを守るためであれば多少は骨を折ってやろうか、とは思うがね」
「そうなのですか」
「祖国のために働きたいという思い事態はあるがね。考えてもみろ。第一次世界大戦が終わり、わしや君の父親がフランスの捕虜収容所から戻ってきたころのドイツとはワケが違う。西にせよ東にせよ、ドイツは先の第二次世界大戦の戦争責任をすべて総統とナチスに押し付け、自分たちは知らぬ存ぜぬですませる情けなさだ。かつてのドイツであれば、もう一度やり直し、今度こそ偉大なドイツを世界に示そうというのが我が党に限らず、国民すべての声であったというのに」

 忌々しそうにそう語ってランプは酒を呷った。

「上の連中はなにやら中東の反ユダヤ系イスラム勢力やアメリカや西側の反共勢力に協力して党を再建し、祖国へ帰ろうと色々考えているようだが、ナンセンスだ。それが上手くいって、この地上からユダヤ人とコミュニストどもを一掃できたとしても、ナチスを邪悪と語る欧米型民主主義が残る以上、どうにもなるまいよ」
「では、いったいなぜぼくをここに?」
「ああ、一応君に日本行きを命じた上官として、君が使命を果たしたかどうか確認したくてな。例の機密文書はどう
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