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漫画家の妹
第一章

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               漫画家の妹
 綿民未穂の姉は漫画家をしている、だが漫画家であると共にまだ大学生でありそちらも忙しい状況にある。
 しかも漫画家として売れっ子で連載をストーリーもの二本に四コマも持っていてとにかく多忙だ、しかも今回は。
「イラストのお仕事もなの」
「頼まれてね」
 姉は家で未穂に話した、目の下のクマが多忙さを物語っている。外見は妹とは正反対で眼鏡の知的な顔立ちで黒髪ロングにすらりとした長身だ。彼女は父親似で未穂は母親似なのだ。
 その姉がだ、こう言うのだった。
「出版社に。しかも原稿料よかったし」
「受けたの」
「そう、ラノベのイラストね」
「じゃあこれからはそっちもなの」
「描くわ、けれどね」
「お姉ちゃん今連載三つ持ってるわよね」
「今度読み切りも描くわ」
 そちらの仕事もあるというのだ。
「それで大学の方もね」
「あの、大丈夫?」
 未穂はここまで聞いて姉に問い返した。
「お仕事も大学も」
「正直に言うとね」
「辛いの?」
「アシスタントさん欲しいわ」
 これが姉の返事だった。
「実際ね」
「そうなの」
「ええ。冗談抜きで募集しようかしら」
 本気で検討していた。
「これからね」
「募集してそして」
「助けて欲しいけれど募集しても」
「今のお仕事には」
「間に合わないし」
「連載三本と読み切りと」
「イラストね。同人誌の方もあるし」
 仕事ではないがこちらもあるというのだ。
「だからね」
「もう今大変なのね」
「徹夜覚悟よ」
「徹夜はよくないわよ」
 未穂は姉を気遣ってそれはと言った。
「やっぱり」
「身体に悪いわよね」
「凄くね」
 言うまでもなくとだ、未穂は姉に答えた。
「だからそれだけはね」
「これまでしたことないから」
 その徹夜はとだ、姉も答えた。
「私だって」
「受験の時もよね」
「これまで締め切りが幾ら大変でも」
「寝てはいたわよね」
「少しでもね」
「そうよね」
「私だってしたくないわ。けれどね」
 今回ばかりはというのだ。
「もうね」
「そうも言っていられないのね」
「今の状況はね」
「そんなに大変なの」
「大学は出るわ」
 これは絶対だった。
「ただ。もう電車の中でもね」
「描くしかないのね」
「一ページでも多く仕上げないと」
 切羽詰まった、まさにその顔での言葉だった。
「本当にそんな状況だから」
「それでお家に帰ったら」
「もうお風呂も御飯もね」
 生活、それもというのだ。
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