第二章
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「キョンシーはのう」
「はい、餅米にですね」
「桃とお札が弱点じゃ」
「そして鶏の血ですね」
「知っておるではないか、鎌や大蒜はな」
「効果がないですね」
「大蒜はドラキュラ伯爵ではないのか」
こちらではないかというのだ。
「違うか」
「そうですね、ですが」
「この度はか」
「この二つで充分です」
こう言ってだ、彼は老人と共にだった。
中華街の中で二時になるのを待った、そしてだった。
二時になると街の道に出た、するとキョンシーの恰好である清代の死者の服である満州民族の服を着た男が夜空に出て来た。
見れば髪の毛は赤く目は青い、死者の青白い顔をしていたが。
その赤髪と碧眼を見てだ、ロストは内心確信した。そうして自分達を見付けて急降下して襲おうとしてくるキョンシーに。
大蒜を投げつけた、するとキョンシーはその大蒜を身体に受けてその受けた部分から煙を出して焼かれ苦しみだした。
苦しむ動きを止めた瞬間にだった、ロストは跳び上がり。
キョンシーの身体に下から掴みかかり自分の力で風を出して。
空を風の力で自由に飛びキョンシーごと急降下して吸血鬼の身体を地面に背中から叩き付けその身体に馬乗りになり。
心臓に鎌を突き立てた、それも一度ではなく。
二度そうした、するとキョンシーはすさまじい呻き声を挙げてその場で動かなくなった。それからその身体を灰にして風と共に消え去った。後には満州民族の服だけが残った。
その一部始終を見てだ、老人は立ち上がったロストに尋ねた。
「今のは」
「はい、実はこのキョンシーはキョンシーでなかったのです」
「まさか」
「いえ、そのまさかです」
ロストは老人のところに来て話した。
「この吸血鬼は別の種類の吸血鬼です」
「というと」
「ストリゴイイという吸血鬼です」
「ストリゴイイ?」
「東欧の方の吸血鬼です」
「ああ、あそこはのう」
東欧と聞いてだ、老人も言った。
「吸血鬼の本場じゃな」
「とかく吸血鬼のお話が多いですね」
「さっきわしはドラキュラ伯爵を話に出したが」
「そのドラキュラ伯爵もそうですし」
「他にもじゃな」
「様々な吸血鬼がいまして」
それでというのだ。
「この吸血鬼もです」
「そのうちの一つか」
「そうなのです」
「それがストリゴイイか」
「赤髪と碧眼、空を飛ぶことがその特徴です」
「だからあんたはその話を聞いてか」
「キョンシーではないと思いました、桃や餅米が通じないとも聞きましたし」
このこともあってというのだ。
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