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勇者たちの歴史
西暦編
第七話 タイム・リミットB
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……その格好、」
「ああ、これは居合の稽古着です。いつもは屋外でやってたんですが、久しぶりに訓練場で行うのもいいだろうと思ったので」
「そう…………」
 若葉は、千景から少し離れた場所で柔軟の体操を始めた。
 千景の訓練の迷惑にならないように、という気遣いだろう。そういうことなら、と千景もまた自分の訓練を再開する。
 先と同じように、狙い通りの軌跡を描く彼女の刃。
「くッ……………!!」
 やはり思い通りの速さはでないが、それでも狙いは一切ぶれることなく最後までやり通し、千景は大きく息を吐いた。
 激しく動いた割に、疲れはそれほどない。勇者としての力に目覚めてから、彼女たちの身体能力は人間のそれを遥かに上回っていた。今の千景は、鉄でできた大鎌を何時間でも振り回すことができる。
 もう一度、と大鎌を構え直したところで、ふと覚えた違和感に千景の動きが止まった。
 若葉が来てから三十分が過ぎているのだが……訓練の音がほとんど聞こえない。
 まだ柔軟をしているのだろうか、と千景が目を向けると、若葉もまた訓練を始めていた。
 抜刀から一の太刀、二の太刀、そして納刀。
 一連の動作は流れるように行われる。だが、その動きに違和感を覚えて、千景は眉を顰めた。
 ――――――異様に、遅い……?
 不自然な停滞もなく、流麗に振るわれる木刀には、普段の若葉が行う居合の速さはどこにもない。同じ動作を何回か繰り返し行ったかと思うと、同じ姿勢から異なる軌跡の太刀筋で、また複数回木刀を振るう。
 十通りほどの動きを繰り返して、若葉は木刀を床に置く。
 休憩かと思いきや、木刀を拾いながら抜き放つ動きを練習し始める。それもゆっくりと、太刀筋をブレさせることなく同じ動きを、
「……それは、何の訓練なの?」
「え?」
 思わず疑問を投げかけてから、少し後悔する。
 他人に集中を乱されるのは、あまり気分のいいものではない。特に、千景は若葉とそこまで親しくしている間柄でもなく、邪魔をしてしまった罪悪感に言葉が詰まる。
 ただ、訓練の手を止めさせて、やはり何でもない、とは言えない。
「その、いつもの訓練や模擬戦の動きより……とても遅く、見えたから」
「型稽古といって、基礎の動きを身に付けたり、確認したりする練習なんです。どの場面で、どの動きが一番適しているかを何度も繰り返すことで、とっさの時に判断に迷わなくてすむんですよ」
「そう……」
 棘のある返答でなかったことに安堵する。
 こういう気性が、彼女がリーダーに選ばれた理由でもあるのだろう。厭戦的な自分は当然ながら、考えなしに動きがちな球子や臆病な杏、前に立って引っ張るタイプではない友奈に、勇者のまとめ役は難しい。
 別に……、……認めてないわけじゃ、ないのだけれど……。
「先に、戻っているわ
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