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勇者たちの歴史
西暦編
第七話 タイム・リミットB
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 連携訓練が終えた、夕暮れ時。
 千景は一人、訓練場で大鎌を振るっていた。
「……………まだ、遅い……、この…………ッ」
 風を切って振るわれる大鎌は、まだ千景の思うようには扱えない。
 この二年、欠かさず行ってきた訓練で少しは手に馴染んできたようにも思う。けれど、千景の思う速さにはまだまだ遠く、訓練のたびに小さな苛立ちが募っていく。
 二撃、三撃、弧を描く刃の軌跡は、彼女の狙い通りの位置を切り裂き、翻って切り払われる。
 だが、まだこんな速度では足りない。
 額から流れる汗が鬱陶しい。踏み込みながら二閃、流れそうになる体勢に逆らわず、回転しながら更に一撃。
「……まだ、……!」
 切り払い、薙ぎ払い、叩き切り、突き倒し、いく通りもの動きを試してようやく止まる。
 すっかり息が上がっていた。冬だというのに、身体が熱を発している。
「……もっと強く、もっと速くならないと……」
 ここ数日、これまで個人で行っていた訓練を、連携を重視した内容で行っていた。
 そのことについて、千景も異論はない。
 彼女の大鎌は攻撃範囲が広いが、その分周囲の仲間に気を配る必要がある武器だ。連携の訓練をしてどう動けばいいのかも実践で確認できたし、事実今日の訓練でも危ない場面はなかった。
 ただ、その分個人の訓練時間が削られてしまうのは問題だった。
 千景は、まだ自分の強さに自信が持てていない。それは、他の勇者たちと違い、千景にはバーテックスと対峙した経験がないせいだ。映像記録で見た、自衛隊を蹂躙する敵の姿に、自分が本当に戦えるのかといつも不安に思う。
 …………あんな化け物を相手に、どうして自分たちが戦わなければいけないのだろう。
 そんなことを考えたこともあった。
 答えは簡単だ、千景たちだけがバーテックスと戦う力を持っているからでしかない。それを知らされた時、千景は自分の人生の中で、最悪に理不尽な理由だと思った。人を護りたい意志もない、悪いことをした罰でもないのに、ただ力があるというだけで化け物たちと命がけで戦わされるのだから。
 怖い、のかもしれない。
 死にたくない、生きたい、という思いは人一倍強い。
 だからこそ、決して死なないために、バーテックスへの恐怖を振り払うために、千景はただひたすらに大鎌を振るい続ける。
 
 そして、千景は知らないことだが、彼女の他にもう一人、日常的に自主訓練を行っている勇者がいた。
「…………あれ? 郡さんも、自主訓練ですか?」
「え……、乃木、さん……?」
 訓練場に入ってきた若葉に、千景の顔に微妙な表情が浮かぶ。
 若葉は、見慣れない剣道着姿に、いつもの鉄棒の入った木刀を鞘に納めて携えていた。千景の記憶では、いつもの訓練では身軽なスポーツウェアを着用していたはずだが、
「乃木さん
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