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勇者たちの歴史
西暦編
第七話 タイム・リミットB
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戦となった。
 
 若葉が提案したのは、冬木の人々を護るための連携訓練だった。
 あの日、若葉は自分の責任を強く感じていた。通信における約定は、大社からの指示によるものではあるが、若葉が説明して結んだものだ。
 諏訪の歌野も、冬木の凛も、彼女の話に納得して約定に同意してくれた。その約定を、よりにもよって提案した側である四国が破り、それを指摘した凛に対して若葉は激昂してしまったのだ。
 自分の責任を、果たすことができなかった。
 自分が交わした約束事を、守ることができなかった。
 何事にも報いを――――それが乃木の生き様だ。ならば、約束を反故し、信頼を裏切った自分や四国は、それでも頼ってくれる冬木の信頼にどうやったら報いることができるのだろうか。
 そうして思いついたのは、作戦を完璧に成功させることだった。
 勇者の役割は、四国の近くまでやって来た冬木の人々を、安全に結界内部まで辿り着かせること。
 つまりは護衛役だが、若葉は作戦の中で大きな不安があった。
 一つは、冬木側の移動方法だ。
 二年前、若葉たちは危険な本州から、比較的安全な四国へと逃げることができた。だが、それは勇者の力を持った若葉の存在と、それ以上に巫女の素質に目覚めたひなたが安全な進路を指示してくれたからこそ成し遂げられたことだ。
 冬木には、勇者も巫女もいない。
 勇者の代わりの人材は話に聞いているが、巫女の助けもなく数百人規模の移動など、果たして上手くいくのだろうか。二年前、バーテックスと直接対峙した若葉からすれば、とても成功するとは思えない作戦だった。
 もう一つが、自分たちの問題だ。
 この二年の間、勇者である若葉たちは確実に力を付けてきた。
 対バーテックスの戦い方を身に付け、身を護り戦闘を補助する戦装束を作り出し、神樹の力を借りた攻撃方法を編み出した。力の足りなかったあの時とは違う、たとえ戦闘になってもバーテックスを相手に遅れをとるつもりなどない。
 だが、それはあくまでバーテックスと戦うための訓練だ。
 無防備な一般市民を護りながら戦う訓練など、若葉たちはしたことがない。果たして、今の自分たちで襲い来るだろう無数のバーテックスから人々を護り切れるのか、若葉には自信がなかった。
 脱出作戦まで一週間――――――勇者として、何かできることがあるはずだ。
「そうだ…………答えは、一つしかない…………」
 自信がないのなら、つければいい。
 バーテックスと戦う自信も、技も、力も全部訓練をして身に付けてきた。今回だって、訓練の中で動き方や立ち回りを身に付ければ、不安もなくなるし、なにより冬木の人々をより安全に護ることに繋がるはずだ。
 
 ――――そうして、若葉の提案した訓練は、四国の勇者の関係に確かな変化を起こしていた。
 
 
 
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