第五次イゼルローン要塞攻防戦6
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。しかし、このような事態になるとは予想はしておりませんでした。申し訳ございません」
「いや、いい。それを考えなかったのは私も同じだ。それで、ヤン少佐。君がそれを考えたということか」
「いえ」
はっきりとヤンは否定の言葉を出した。
「これを考えたのは、あの場に――スレイヤー少将の艦隊にいる、アレス・マクワイルド大尉です」
「マクワイルド大尉が。だが、彼は情報参謀だろう」
「はい。作戦参謀が考えた懸念を、彼もまた考えて……」
「嘘をつくな!」
ビロライネンの叫びが、ヤンを遮った。
怪訝を浮かべるシトレ大将に対して、ビロライネンはもう一度言葉にした。
「そんなことは情報参謀では聞いておりません。もしあったとしたのならば、作戦参謀から盗み聞きをして、都合の良いことを言っていただけです」
「何をおっしゃいますか、ビロライネン大佐!」
「アロンソ――中佐」
ビロライネンを一括したのは、ヤンの隣から――クエリオ・アロンソであった。
視線が、娘と同様に感情を表に出さないながらに、静かにビロライネンを見ている。
だが、その言葉は苛烈であった。
「確かに小官は会議の際に、マクワイルド大尉の懸念を伝えました。それをシトレ大将にお伝えすると言ったのは、貴官だと記憶しておりますが」
「そのような記憶はない」
「え。いや、そう言ったではなかったかな」
ビロライネンとアロンソの睨み合いに、追加されたのは、リバモア少将だ。
情報主任参謀が口を出せば、ビロライネンが殺さぬばかりにリバモアを睨む。
「ああ。言ってなかったかもしれないな」
あっさりと覆った意見を横にして、ビロライネンはアロンソを睨んだ。
だが、リバモアとは違って、アロンソは一切の妥協を許さぬ表情だ。
静かな目が二つ、ビロライネンを捉えていた。
「何をしている!」
その均衡を破ったのは、シトレの呆れたような、そして、強い叱責の言葉だ。
「貴官らは、いまの現状を分かっているのか。誰が言った、言わないなど、ここで話す問題ではない。今の問題は、彼らをどう救うかだ――ヤン少佐。その策を!」
「……は! 作戦コード、D-3を開いてください」
「D-3を開きます」
言葉に対して、シトレの背後の作戦会議用の円卓テーブルに立体映像が浮かんだ。
それは現在の状況を映し出した映像――そして、時を加速して進む動きに、シトレは――そして、参謀の面々は食い入るように、それを見ていた。
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