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ハイスクールD×D 聖なる槍と霊滅の刃
第四部 冥界の英雄
英雄の再始動、寄り添う少女
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と信じていた。決して、洗脳したわけでもないが、そうなるとわかっていた。―――彼女が、最も自分にとって役に立つ『道具』でいようと思っていることは知っていたから。
それを知りながら利用する自分は救いようがないなと微かに自嘲しながらも、それが英雄となる道のためならばという自分を止められない。
だがそれを言葉にすると、目の前の少女は少しだけ、悲しそうな表情をするのだ。まるで『違う、そうじゃないよ』と言いたげに。
トン、と肩を押してやると何の抵抗もなくベッドの上に少女が倒れる。飾り気のない白いシーツの上に、黒絹のような長い髪が広がって模様を描く。
手首を軽く押さえる様にして上から覗き込むと、彼女の闇色の瞳と目が合う。総ての色を際立たせ輝かせる無地の黒。夜空の色の瞳だ。押し倒されている格好になったというのに、一片の動揺もなく、むしろあどけなくすら見える色を出しながらこちらを見上げている。

「―――どうか、したの?」

キョトンとこちらを見上げるその瞳に、なんでもないと返しながら観察する。
彼女は体の不調を隠すのは相当に上手い。生きてきた環境が環境のため、責めるつもりはないがそれでも時折こうやって観察するのが習い性になってしまった。
彼女の瞳から視線を下へ滑らせる。白い肌が眩しい首元、緩やかだが服の上からでも確かな曲線を描く胸、ほっそりとした腕、無防備に投げ出された足に視線を走らせ、傷を隠している様子がないことを確かめる。
こちらの不躾な視線に動じることもなく、むしろ不思議そうな視線を返してくる少女に、ちらっとこのまま襲ってやろうかという考えが脳裏をかすめる。
だが残念ながら時間がない。先ほど、ゲオルク達が動き出したという情報が入ったばかりだ。もう動かなければ間に合わなくなってしまう。

「……四織、行くぞ。ゲオルク達が動き出した、作戦の開始を早める」

「ん、分かった」

上からどいてやると身軽に跳ね起きた少女が刀を手に取る。いつでもいいよ、と告げる視線に槍を出してトントンと肩を叩く。
―――では、行くとしようか。

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