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ラジェンドラ戦記〜シンドゥラの横着者、パルスを救わんとす
第三部 原作変容
序章 新朝始歌
第三十話 新朝始歌
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まだ戻っておらんのか。私、グルガーンは尊師に近づき、耳打ちをした。
「尊師、サンジェはヴァフリーズの密書を奪ってくると言ってペシャワールへ赴き、まだ戻っておりません。私も止めたのですが、尊師のお役に立ちたいのだと」
「やれやれ、気持ちは有り難いが儂に無断で動くとは困った奴じゃの。まあよい、グンディー、グンディーはおるか!」
「はい、お側に!」
闇が揺らめいたと思ったら、その次の瞬間にはグンディーがすぐそこに現れ、頭を垂れていた。
「グンディー、汝の誇りとするは、確か瞬間移動の術であったの?」
「はい、長距離は無理ですが、数ガズ(≒メートル)の距離ならば瞬時に移動を繰り返すことが出来、戦闘にも使用できます」
「よし、汝に命ずる。ラジェンドラ王子の一党がタハミーネを王宮から救い出しおったが、まだ遠くへは行っておらぬじゃろう。かの王子の羽翼を一つ二つもいで参れ!パルスの太陽はいつまでも奴らの上に輝かぬと教えてやるのじゃ!」
「ははっ!!」と一礼するとグンディーは姿を消した。
なるほど、瞬間移動の術であれば、気配を悟られずに接近でき、どのような手練れでも造作なく屠れるということか。まずいな、王子たちに連絡を。いや、無理か。このグルガーン、皮肉にも尊師に信頼を得過ぎ、弟子たちの筆頭として常に尊師の側にあるよう命ぜられてしまっている。お陰で連絡を取る隙すら作れぬ。申し訳ないが、王子たちには自力で何とかしてもらうしかない。どうかご無事で。
◇◇
その男が、馬に乗って近づいてきたのは、俺たちが大陸公路の脇で夜営をし、焚き火のもとで食事をしていたときだった。焚き火に照らされたその男の顔立ちは秀麗と言ってよいほどのものだったが、眉間に刻まれた皺と不自然な曲線を描いた口元が剣呑な印象を与えていた。三人娘などは思わず傍らの武器を引き寄せようとしたほどだ。
「大丈夫」
と骨付き肉にしゃぶりついたままのラクシュが告げたことで、三人娘は警戒を解いた。ラクシュは殺気をもって近づく人間を決して見逃さないし、三人娘はその意味ではラクシュを信用している。あくまでもその意味では、だが。
「馬上から失礼。妹を探している。アルフリードと言って、年は十六歳。頭に水色の布を巻いていて、馬と弓を得意としている勝ち気な娘だ。心当たりはないか?」
顔つきといかにも盗賊然とした装束で察しがついていたが、今の言葉で確信した。こいつ、アルフリードの兄でゾット族の一員、メルレインだ。妹を見つけぬことには故郷に帰れぬと、あちこちを探し回っていて、原作ではダイラム地方に最初に姿を現したが、パルス暦321年1月4日の今この時には、王都から東へ二十ファルサング(百キロメートル)ほどのこの辺りにいたということか。
「アルフリードなら俺
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