第25話『ゼノブレイドを求めて〜独立交易自由都市へ』
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ムアリーシャ達が開いた軍議の詳細は、凱の抜けた穴をどう補うかでもあった。
竜具も超常的事象を引き起こす武具だが、銃火器もまた力学をものともしない超常現象を引き起こす兵器なのだ。そしてまた、ディナントの戦いで銃火兵力を圧倒した凱もまた、今の銀の流星軍に欠かすことのできない貴重な戦力である。今は防衛に徹し、凱が再び翼を得て戻ったときこそ、満を期して反撃に転じる時。
「任せてください!我等もガイ殿の帰還を心から待っています!」
まるで作者の執筆再開を待ちわびるかのような、ルーリックのエール。
そんなルーリックの、凱に心配させまいような気遣い。きっと不安もあるだろう。凱の抜けたその穴のことが。
だが――凱の独立交易都市出立に凱との同行を願い出る者もいた。
「あたしも行きます!一緒に行かせてください!」
栗色の髪の少女が真剣な面持ちで躍り出る。
「ダメだ!これは、俺一人で行かなければならない」
対して凱も譲らない。
これから訪れる独立交易自由都市とて、あの時取り戻した平和は、今とて平和である保証はない。
もしかしたらどこかの新大陸と交戦中か、あるいは勢力の小競り合いをしているのか――
「あたしは見届けたいんです!ガイさんの物語の行く末を!」
――――ティッタ。
栗色の髪の少女の、切望の一矢。
言葉が矢じりとなって凱の耳朶に突き刺さる。
「ガイ、私からも頼む!私も……お前のそばにおいてほしい!」
意外なことに、現実主義と打算行動を軸に動く傭兵フィーネからも、ティッタに乗弁してきた。
だけど、俺も折れるわけにはいかない。
「……それでもだめだ。フィーネは銀の流星軍を助けてやってほしい。ティッタもアルサスの人たちを励ましてやってくれないか」
勇者の頼みに傭兵は思わず歯ぎしりする。
自分にあれだけの仕打ちをしたアルサスの心配さえもする。
――そういうお前のお人よしは……死んでも治らないだろうな。
ならば、自分たちのすべきことは明白だった。
「――わかった。なら思う存分やってきな。お前が守りたいものは、私たちが守る」
その言葉は、まるで母親が子供を送り出すかのような――優しいもの。
いつも家を守ってくれる、大きくて優しい存在の……女性のみが抱く強さ。
「ありがとう」
たった一言。凱は言葉を返した。
数秒をおいて、凱は大空を見上げる。
すうっと深呼吸を行い、誓いの瞳を輝かせる。
それはどこか……絶望の今を乗り越えた先を見据えた――希望の光。
未だ誰も見たことのない原作を描く、ライトノベル勇者の使命を果たすために。
かつてないほどに、崩壊した原作を取り戻すためには勇者の剣を。
そのために。
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