第25話『ゼノブレイドを求めて〜独立交易自由都市へ』
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……御免」
そうして――セシリーは凱の胸元で幼子のように泣き続けた。
まるで……親とはぐれた子供が、突然の安堵の為に泣き崩れたのと同じように。
紅い髪の少女、神剣の騎士セシリー=キャンベル。エインズワーズという、嫁ぎ先の姓を併せ持つ
独立交易都市の英雄。
戦闘力など皆無に等しかった彼女は、鍛冶師を営むルークと出会い、数多の試練を重ねるうちにヴァルバニルを封印せしめるほどの力を得て英雄視されることとなる。
数え切れる屍の犠牲を払って得た平和。阿鼻叫喚の戦乱を沈めた彼女は、代理契約戦争の後に訪れた新大陸からの侵略撃退にも貢献。一騎当千の活躍を遂げる。
とにかく彼女は、市民を守ること、何より生命を守るという使命に燃えた。
――目に映る人々を全て守る――
自らの赤い髪に誓いを立てるように、赤い瞳にも決意の輝きが滲んでいた。
だが、その決意と誓いは永久に果たせぬものとなった。
――獅子王凱の突然の失踪――
その人は、文字通りの勇者だった。
私なんかと比べるよりも、あの人がもっと称賛されるべきだった。
目に映る人々を全て救う。その誓いをいつしか凱に縛り付けていた。
だけど、今にして思えば、凱へ架した苦しみを想うと、私の誓いなど子供じみた、とるに足らない約束かもしれない。
一人の命を救う為に、一人の人間を犠牲にするその矛盾。
そして、セシリーは傷ついていた。
自分の活躍の裏に、自分の知らないところで、凱が『独立交易都市永久追放』の処分を受けていたなんて――
私は愚かだった。
愚かゆえに、ガイを失ってしまった。
だが、今はこうしてガイは来てくれた。
何のために来たのか分からない。しかし、今はそんなことどうでもよかった。
ガイは生きていた。例え自分たちの気が軽くなるとしても、それがわかっただけで充分だった。
そして、先ほどからセシリーが抱いている『小さな命』の姿が凱の視界にはいる。
「――子供が……生まれたんだね。おめでとう!セシリー!」
アリファールを布に巻いて隠し、荷物用として擬態させて壁にかけている。
常に風を巻くアリファールなら、長剣のような形を布に残すこともないし、風船のように若干膨らませれば、背負い型の袋に見えなくもない。
ともかく、いの一番に凱から祝福の言葉をかけられたセシリーは、うれしさのあまり顔をほんのり赤らめた。
「ありがとう――この子の名前はコーネリアス。女の子だ」
――そうか……ルークとセシリーはもう、『平穏』を得ていたんだな。
布にくるまう赤子を抱く母の姿はまるで、一枚の肖像画のよう。
「そういえば、ルークの本業……いや、工房リーザの本業は実用品だったな」
見れば、見本の出刃包丁や農作業用のクワが並べられている
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