巻ノ百四十九 最後の戦その四
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「先の戦でも負けた」
「大坂でも」
「だからな」
それでというのだ。
「最後の最後にはな」
「勝たれますか」
「そうする、そしてわしの今の生もな」
これ自体もというのだ。
「終わらせる」
「それは」
「わしも古稀をとうに過ぎておるのじゃ」
その歳から話す家康だった。
「しかも間違いなく天命は果たした」
「天下泰平を定められ」
「それではじゃ」
「もうですか」
「この世での生は終わる」
歳から見ても務めから見てもというのだ。
「だからな」
「今宵の戦が終われば」
「どちらにしろ間もなくな」
「この度の生はですか」
「終わるわ、そして生まれ変わったら」
それからのことも話した家康だった。
「またお主と会うかな」
「それがしと」
「あの者とも会いたいのう」
「真田殿とも」
「今度は敵同士でなくな」
「主従としてお会いになりたいですか」
「いや、友じゃ」
家康はここで笑った、そのうえで服部に答えた。
「友として会いたい」
「その間柄で、ですか」
「うむ、会いたい」
こう考えているというのだ。
「是非な」
「そうなのですか」
「あの者とは主従であるよりもな」
「友としてですか」
「次の生では会って共にいたい」
「それは真田殿のお心故にですな」
「そうじゃ、あれだけ見事な心の者はおらん」
幸村の心はわかっていた、それは敵同士だからこそ余計にわかることなのだ。
「それでじゃ」
「是非にですか」
「あの者とは友としてな」
「次の生では」
「共にいたい」
「左様ですか」
「うむ、ではな」
家康は服部にここまで話してだ、そしてだった。
その場に確かな顔で自身も刀を手に取った、そのうえで幸村達を待ち構えるのだった。
幸村一行のうち十勇士以外の者達は夜の駿府の城下町を進んでいた、夜の町は静かで今は人っ子一人いない。そして野良犬や野良猫もだ。
街にいない、それで長曾我部はこう言った。
「ふむ、今はな」
「静かですな、駿府の街も」
「全くじゃ」
こう明石に応えた。
「実にな」
「まるで嵐が来る前の様に」
「町人達はこれからの戦は知らぬが」
「それでも何かをですな」
「感じ取っておるのであろう」
それでというのだ。
「だからじゃ」
「それで街も静かで」
「人も家の中に引っ込んでおるぜよ」
「左様でありますな」
「そうじゃ、ではな」
「このままですな」
「大手門まで向かおうぞ」
駿府城のそこにというのだ。
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