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ラジェンドラ戦記〜シンドゥラの横着者、パルスを救わんとす
第三部 原作変容
序章 新朝始歌
第二十七話 豪王末路
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が起きた。寒い。たった今まであんなに熱かったはずが、今は寒すぎる。背筋が、いや、体全体が冷えていた。それどころか、全身に力が入らぬ。自分の意思とはまるで関係なしに、手足が痙攣する。それを全く抑えられない。

それを待っていたかのように拷問吏たちが刃物を手に動いた。予をうつ伏せにして四肢を押さえ付け、そしてまるで示し合わせたかのように同時に両手両足の腱を切断した。もはや、声すら出せない。更に残りの拷問吏が何かを持ってきた。布?袋?いや、死体袋だ。それに予を入れるつもりか?やめろ、まだ予は死んでおらぬ!しかし、既に身じろぎすら出来ぬ。頭から死体袋を被せられ、そのまま拷問吏数人に担がれ、何処かへと運ばれた。

そして、いきなり地面に投げ落とされた。何処だ、ここは?いや、見覚えがある。王宮内の屋外広場だ。式典などに使われていた場所だ。見回すとそこには、完全武装のルシタニア騎士数十名と、聖職者たち数名、それと豪奢な絹服を纏った王族らしき者たちが見えた。視界の全てに鉄格子が見える。どうやら、広場の一角に置かれた檻の中の床面に死体袋を逆さにして落とされたようだ。

「ようやく来おったな!汚らわしい邪教の王めが!今から地上における正しき神の代理者たる我らの王がお主に引導を渡してくれるわ!だが、お前は我らの王が立ち合うにふさわしき勇気の持ち主であることを証さなくてはならない。この檻の中の獅子を倒してそれを証明してから、我が王の前に立つが良い!」

そう喚いておるのは、ルシタニアの聖職者か。だが、迫力も貫禄もない。声に張りはあるが、何処か響きが軽い。そうか、聖職者の主催する、予を殺すための儀式が今から行われようとしている訳か。ルシタニアの国王は惰弱と聞く。そのような王にでも予を殺せるよう、拷問で痛めつけ、毒を使い、四肢の腱を切断し、獅子の檻に入れたか。この状態で獅子と戦って無事に済むはずがない。万が一勝てたとしても充分に弱りきった予を、国王自らの手で殺させるという算段か。なかなか考えたものだな。絵を書いたのは王弟のギスカール公辺りだろう。ろくでもないことを思いついてくれたものだ。

檻の中央部分にあった仕切りが外され、のそりのそりと獅子が予に近づいてくる。予は縛られてこそいないが、体に力が入らず床に仰向けに横たわったまま、首だけを迫り来る獅子に向けている。辺りにはこれでは何の抵抗もなく喰われるだけだろうと、予を嘲笑うような空気が流れていた。

馬鹿めが!予が最初に獅子を倒したのは、十三歳のことだった。十一歳で倒したヒルメスには負けるが、あのダリューンよりも早いのだぞ?この状態でも獅子一頭ぐらい倒すなど造作も無いことよ!

もはや何も出来ぬとたかを括ったのか、獅子が無警戒で近づき、予の首に牙を立てんとしてきた。そうだ、それを待っていた!予はバネじかけで
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