暁 〜小説投稿サイト〜
整備員の約束
1. 嫌煙
[1/3]

前書き [1] 最後 [2]次話
 今日一日の仕事を終え、くわえタバコで整備場をあとにする。顎をさすり、若干髭が伸びていることに気付いた。出来れば一日に二回ぐらい、髭剃りの時間が欲しいもんだ。

 そんなことを考えていたら、遅番の同僚とすれ違いになった。こいつは今日は夜からのシフトになるため、朝から仕事の俺とは入れ違いになる。

「徳永ー。お疲れー」
「ああお疲れ」
「聞いたか? 提督が艦娘のやつと一緒に小料理屋を開いたってさ」
「いや、初耳だが……」
「だったら行ってみたらどうだ? 鎮守府のメンバーならタダで食っていいらしいぞ」
「マジか」
「慰安と福利厚生が目的だってさ」

 この激戦区で福利厚生まで気にするなんてマジかよ……とも思ったが、まぁあのお人好しの提督さんならやりかねん。あの人、以前にもムリを言って鎮守府の中に美容院を建てたこともあったしな。美容師の腕もよく、艦娘たちからも評判がいいと、以前に小耳に挟んだことがある。

 それでも艦娘のやつに店を任せるのはどうかと思うし、提督さんが店を手伝うってのも、なんだかちょっとおかしな話だが。

「まぁーこんなご時世だ。些細なことでも楽しみがないとやってられんだろ」
「まぁなぁ……」

 そんな仲間の言葉に納得したあと、その仲間と別れて、一路その店へと向かう。機械油で若干汚れた作業着からは、少し油の匂いが立っているが……気になるほどではないだろう。そのまま店へと向かうことにした。

 海のバケモノ共と戦争を始めてからもうだいぶ経つ。俺がこの鎮守府に着任してからまだ半年ぐらいしか経ってないが、その間に死んでいった奴も少なくない。整備する艤装の数も、最近は以前に比べて少なくなってきた気がするし。艦娘の奴らにとっちゃ、毎日が死と隣り合わせのこのご時世。確かに楽しみがないとやってられんだろう。

 仲間に言われるままに、作業服のままで教えられた場所に足を運んでみた。

「う……」

 確かに佇まいはこじんまりとしたものだが、そこには立派な料亭が建てられていた。まだ建てられて日が浅いのだろう。壁やのれんは新しい。

 看板に目をやると、『鳳翔』と書かれている。詳しくは知らないが、料理がうまい艦娘だと聞いたことがある。引き戸になっている入り口の前には、アルミの一斗缶のような吸い殻入れが置いてあった。

 入り口の周辺を見回す。禁煙のマークはない。鎮守府は喫煙者も多く、施設内で禁煙の場合は入り口に必ず禁煙のマークをつける決まりがある。そのマークがないということは、少なくともタバコを吸うことは禁じられてはいないということだ。

 気を良くした俺は、そのまま引き戸を開き、店内に入った。

「え!? そうなの!? よかったじゃんジンツウ!! 二人とも仲良かったもんね!!」

 途端に俺
前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ