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ラジェンドラ戦記〜シンドゥラの横着者、パルスを救わんとす
第二部 原作開始
第二章 王子三人
第二十三話 城塞集結
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いたのだ!憤然とくってかかる私に、だって怖いもの知らずだし、頑固で思い込んだら一直線だし、子供っぽいと思われても仕方ないだろう?などと言うのだ。
それを言うなら、自分がパルスの王太子だと一向に教えず、身分を聞いてもなかなかはっきり答えず、余りにも回りくどい表現をするこいつこそ何だというのだ。そんなのいずれバレるのに、何で隠そうとする?まるで自分の粗相を隠そうとする小児の様ではないか!私がそう責めると、こいつはうなだれながら、それを知られたら君に距離を取られるかもしれない。よそよそしい態度を取られるかもしれない。それが怖かったなどという。
何を言っているのだと私は言ってやった。私はルシタニアの騎士だ。正確にはまだ騎士見習いだが、私が頭を垂れるのはイアルダボート神とルシタニア王室のみだ。お主なんかを敬ってなどやらない。態度など変える訳がないと。
そしたらこいつは妙に喜んでなあ。だったらこれからは私のことをアルスラーンと呼び捨てで呼んでくれ、私も君をエトワールと呼ぶから!などと言ってきたが、鄭重にお断りさせてもらった。
だってなあ、こいつを呼び捨てになんかしてみろ。あの黒衣の騎士が物凄い形相で睨んでくるぞ?こいつは私を怖いもの知らずだなんて言うけど、私にだって恐ろしいものぐらいはある。その最たるものが、アトロパテネで数多の名のある騎士を手に掛けたあの黒衣の騎士だ。その次に怖いのは船だな。そもそもあんな馬鹿でかくて重いものが何故浮くんだ?ありえないだろう?マルヤムからパルスへは少しだけ船に乗らされたんだが、乗っている間中生きた心地がしなかったんだぞ?そう言ったらこいつ笑い転げやがったんだ!こら、何故笑う?失礼だぞ!
…笑ってる顔を見てるとつくづく思うが、しかし、こいつ可愛らしい顔をしてるよな。父親はえらくゴツいらしいし、母親は冷たい感じの美女らしいのに、こいつはどちらにも似てない気がする。「大人になったら角や尻尾が生えてくるのかも」などと言って笑っていたが、こいつにはそんな風にはなってもらいなくないなあ。今みたいな感じで大人になってくれた方がずっといい。特にあの、晴れ渡った夜空みたいな瞳が好きだ。どれだけ見ていても飽きないものな。
そんな可愛らしい顔なのに、ごく稀にではあるが、ひどく凛々しく感じられて体温が上がりそうになることもある。
カシャーン城塞でホディール卿とやらに娘を差し出されそうになって、私を抱き寄せながら、
「有り難い申し出だが、私はこの娘に夢中なのだ。他の女に構っている暇などないな」
と言い放った時(あのときは何だかムカついて思わず太ももをつねってしまったけど)、
追っ手の矢で馬を失ってしまった私を守ろうと馬首を翻して駆け戻って来てくれたとき(あの後、ギーヴ殿は「面白味のないお坊ちゃまと思ってたんだが
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