第1部
ロマリア〜シャンパーニの塔
旅の扉の向こうには
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裂くような叫び声。
私はわけもわからず、ただただ喚いていた。
「どーした!?」
ナギが驚いた様子でこちらに向かって走ってくる。
私は恐る恐る下を見た。それは、大きな黒いわだかまりに見えた。
けど良く見てみると―――。
「って、ユウリ!!??」
私が踏んでいたのは、探していた張本人、ユウリであった。とたんに顔がさっと青くなる。
私は慌ててふんづけていた足を離し、しゃがみこんで彼の胸に耳を当て安否を確認した。
「よかった……。生きてる……」
何しろ仰向けで寝ている人を思い切り踏みつけてしまったのだ。危うく人を殺めるところだったと、心の底から安堵した。
だけど、なぜかユーリはぴくりとも動かない。あれだけの衝撃と悲鳴を受けて、声ひとつ上げないのもおかしい。
「ゆ、ユウリ、しっかりして!!」
急いで揺り起こし、頬を叩いてユウリを起こす。闇夜の中なのではっきりとは見えないが、近づいてみると彼の顔は生気を失っているように見えた。まさかーーー。
「もしかして、ふみどころが悪かったとか!?」
「いやそれは違うと思うぜ」
ナギが冷静に分析する。
「こいつのこの顔、さっきあんたが毒受けたときと同じような顔してるぜ。それに、何か必死に堪えてるような感じだ」
ナギの言うとおり、ユウリは青ざめた顔で、うつろな目をしながら、何かを必死に我慢している。まるで、吐き気を抑えているような……。
「もしかしてユウリ、旅の扉に酔っちゃったの!?」
私の言葉に、ユウリは一瞬ピクリと反応したが、すぐに元の具合悪そうな顔に戻る。
確かに旅の扉に入った途端、誰かに上下左右ひっきりなしに揺さぶられたような感覚だったし、私も少しくらくらしていた。
……ひょっとして、さっきユウリを起こすときに揺さぶったから、ますますひどくなったんだろうか?
そうなると、こんなところでいつまでも寝かしとくわけにも行かない。責任を感じた私は急いでシーラを起こし、近くに町がないか探し回ることにした。
「とは言ってもなぁ……。ここがどこだかわかんないことにはうかつに動き回るわけにも行かないし、ユウリがこんな状態じゃ、あんまり遠くにはいけないし……」
私は焦りつつも、何かいい考えはないかと考えあぐねていた。ふと目をやると、隣にいるナギの手に持っている一枚の紙に気づく。
「ねえ、ナギ。さっきから気になってたんだけど、その紙いったい何?」
「さあ? よくわかんねえけど、さっき洞窟の入り口を通るときに、途中で宝箱が置いてあってさ、ついつい開けちゃったんだよな。そしたらその中に、こいつが入ってた」
そういって、私にそれを見せる。見た瞬間、私は目を丸くした。
「こ、これってまさか……!!」
私は声を震わせながら叫んだ。叫ばずにはいられなかった。
「そ
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