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ラジェンドラ戦記〜シンドゥラの横着者、パルスを救わんとす
第二部 原作開始
第二章 王子三人
第二十二話 一行離散
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る間も無かったのであろう。したたかに背中を打ち、うめき声を洩らしている。

馬が目を射抜かれ、棹立ちになっている隙に、ザンデが馬上から斬って落される。そうなると思っていたのに、思った以上に馬があっさりと倒れすぎた。我が夫は無双の勇者だが、落馬した敵を、立ち直る隙も与えずに斬殺するのは好まぬだろう。そのような甘さは人として好ましいとは思うが、今はま―

私がとどめを刺そうと駆け寄ろうとする間もなく、我が夫の剣が兜を両断してザンデの頭蓋ごと叩き割っていた。そのすさまじい光景を目の当たりにした手下の兵は算を乱して逃げ散っていく。後には彼らの死体のみが残された。

「…意外じゃったのう。お主ならあのザンデとやらが馬に落ちたとき、剣を振り下ろすのをためらうと思ったのじゃが…」

「ああ、俺が独り身ならそうだったろうな。あいつ程度ならいずれ討ち取れる。後日また正々堂々と雌雄を決すればいい。そう考えただろうな」

「だったら何故じゃ?」

「さっきお主が馬を斬られたとき、肝が冷えた。お主を失うかと思った。あいつを生かしておいては今度はお主が本当に斬られるかもしれない。そう思ったからな。寸毫も迷わなかった」

…そうか、そういうことか。だとしたら私はお主を変えられたのじゃな。あの時別れずにいて本当に良かった。

「ほほう、それは嬉しいことを言ってくれる。わざわざパルスくんだりまでついて来た甲斐があったというものじゃ」

「い、いや、そういうことではない!ただ、お主が死んだらシャーヤールの子守は誰がするのだと思っただけだ!」

そうか、これがラクシュ殿が言っていた「つんでれ」とかいうものか。ふふふ、殿方のそれは確かにかわいいものじゃの。

怒ったかのように無言で先を急ごうとする夫の背中を、私はこみ上げる笑いを堪えながら追いかけた。

◇◇

俺、ナルサスはエラムと共に、南の尾根を越えんとする山道に馬を駆けさせていた。夜明け前までに、幾つかの包囲を抜け、追跡を振り切り、どうにか落ち着いたように思えた。

それにしてもうまくいった、と俺は思う。自分はエラムを伴い、殿下は驍勇のダリューンに委ね、もう一組はエトワール、ラクシュと言った今ひとつ強さに不安がある者たちをシンリァンやギーヴが守る、そういう形が一番自然だと思っていたが、まさにその通りになった。さすが俺だと思わざるを得ない。

が、エラムにそれを話したら、この道に限ってはそうかもしれませんが、他の道を進んだ組み合わせもそうとは限らないのでは?と冷水をぶっかけられた。そ、そうだな、その可能性もあるな。まずい、失敗したかもしれん。いずれにしても早く先に進んで合流しなくては。

しかし、計算違いというものは重なるものであるらしい。ゾット族がヒルメス一党と戦っていたこと、
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