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ラジェンドラ戦記〜シンドゥラの横着者、パルスを救わんとす
第一部 原作以前
第三章 神前決闘編
第十五話 征馬多影
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たはずだし、ネットの二次小説にすら手を出していた。その中で思い描くようになった理想の君主の姿―闊達で国政に真摯に取り組み、私情に流されず、酒食に溺れず、それでいて気さくで親しみやすい面も持つ―を実践しようと心がけた。

とにかく原作みたいに死にたくない、生きながらえたい、そういう自己保身と防衛本能のみでこの十年を生きてきた。だが、弟に対してだけは過剰に防衛本能が働きすぎたかもしれない。キレイな奥さんをもらい、早々に可愛い息子も出来た事で欲が出たのかもしれない。確実にこの子に王位を継がせたい。それには弟が邪魔だ。弟をこの国から追い出し、自分の覇権を確実にしてしまえば、原作のシンドゥラ編につながるフラグは完全に折れるはずと考えるようになった。

本来、サリーマにあそこまでさせるつもりは無かった。ジャスワントに偽の密告をさせればそれで済むはずだった。だが、サリーマがやらせてくれと言ったのだ。それだけ私を愛し、私に賭けてくれたのだろう。頭が下がる。全く私には過ぎた女房だ。余りにも愛しすぎて、つい夜更かししすぎてしまうのも無理はないだろう。それくらいは大目に見て欲しいものだ。

弟に対する負い目が、彼の股肱の臣たちが彼についていこうとするのを決して止めるなと言う命令を私が下してしまうことにつながったのだろう。幸い、あの六人以外は義理と人情に絡め取られて、ここに残ることを選択した。更に俺がその事に対し、大仰に感謝の念を示したことで、より一層その意志が固くなった事だろう。

弟には二度とこの国に足を踏み入れないという誓約書を書かせはしたが、もう一つ保険を掛けておくか。あの王家はもしかしたら、弟を欲しがるかもしれない。対抗馬になるであろうあの人物の真の姿を克明に記載して、文を送ろう。それで翻意して弟を取り込もうと思ってくれたら重畳。何の反応もせずにあの王家が消滅するのだとしても、それも歴史の必然。こちらが心を痛める筋合いもない。

弟よ、この国のことは私が任された。お前にはパルスとあともう一国の運命も背負ってもらおうか!

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