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ラジェンドラ戦記〜シンドゥラの横着者、パルスを救わんとす
第一部 原作以前
第三章 神前決闘編
第十五話 征馬多影
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での私の弟、ラジェンドラだった。これからの事を思うと気が気ではなく、辛うじてぎこちなく笑顔を繕った私を見て、開口一番あいつはこういった。

「…兄上、何だか変わられたか?もしかして前世の事でも思い出されたか?」

その一言で、ピンときてしまった。こいつも転生者かと。大体、原作とガーデーヴィの記憶には余りにも齟齬がありすぎた。何でバハードゥルがまともな知能を持った人間として、ラジェンドラに仕えてるんだ?原作開始よりもまだ十年も前なのに、ガーデーヴィの立場悪くなりすぎだろ?それに原作そのままのラジェンドラなら、その自分をも騙せるほどの演技力を駆使して、酒と女に溺れた父親に対して取るべき態度、親身になって心配し必死に諌める姿勢を選べたはず。余りに原作通りの姿に滑稽さを感じて冷笑などしないはずだ。そして、その間違った態度が、ガーデーヴィに突飛な行動を取らせ、前世の記憶を取り戻すきっかけになったのだ。だから、これはお前の自業自得だぞ、ラジェンドラに転生した誰かさんよ。

そんな不用意過ぎる転生者という悪いお手本がすぐ目の前にあったのだ。それを反面教師として、私は徹底的に自分が転生者であることを隠すことにした。幸い、ラジェンドラはいろんなところでやらかしていたから、自分がついおかしな事をしてしまったときには「弟のが伝染った」と言い訳すればそれで通ってしまった。ある時、サリーマにうっかりボリス・コーネフの事を漏らしてしまったときにも、「弟から聞いた。俺自身はフェザーンが何処にあるのか知らない」で済んでしまったしな。

自分が転生者であるというのを隠すのはあくまでも前提条件。私の至上命題は、原作通りに死を迎えるのを回避する事だ。原作でのガーデーヴィの欠点は、選民意識に染まりきっていること、目下に対する思いやりの無さ、自分の感情を抑える自制心の欠如などが挙げられるだろう。それらが彼自身の身を滅ぼしたとさえ言える。だから私はそれらを克服することに努めた。ラジェンドラが王宮から抜け出す際は必ず同行し、ラジェンドラがそうしていたように民衆の前では気前よく気さくに振る舞った。目下の者の労苦に常にねぎらいの言葉を掛け、感謝を口にした。豪族との付き合いも大切にしたが、それのみに終始しないよう気を配った。学問や武芸についてもよく学んだ。幸い、この体は本来頭も運動神経も悪くないらしい。弟に振り回され、集中を欠いたりしなければ本来はもっと高いパフォーマンスを発揮できたのだろう。

そして、前世の記憶を元により良い王族、為政者となれるよう試行錯誤を繰り返した。前世では某国営放送の大河ドラマを毎年欠かさず見ていたし、吉川三国志を読んだことで中国の歴史に興味を抱き、洋の東西を問わず様々な歴史小説を読破していた。田中芳樹先生の作品もファンタジー色が強すぎないものならほとんど読んでい
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